第5話

 さすがマンモス大学。

 大学の構内に『モスバーガー』がある。

 しかも微妙に街中にある『モスバーガー』よりも安い。

 しかし、来た事なかったんだよね。

 マクドナルドならいざ知らず、モスバーガーって一人ではちょっと入れない高級感があるじゃん?。

 こうやって放課後、モスバーガーに友達と集まってダベる・・・って本当の大学生っぽい。

 いや、本当の大学生なんだけどさ。


 僕はポテトとジンジャーエールを注文した。

 独り暮らしは金がかかる。

 贅沢は敵だ。

 だけどモスバーガーの皮つきポテトって何であんなに旨いんだろうか?。

 だけどポテトだけ頼む勇気はなくて、飲み物も頼んでしまう小市民っぷり。

 僕がポテトと飲み物を頼んだら、内藤さんも中島さんも僕に倣って、ポテトとコーヒーを頼んだ・・・が、哲はコーラとスパイシーチリドッグとポテトのデカいサイズを頼んだ。

 おい、そういう部分だぞ!。

 少しは貧乏人に気を使え!。


 僕「・・・で、何だよ?。」

 哲「へ?。」

 僕「『へ?』じゃねーよ。

 『待ってろ』ってお前言ったじゃん。

 何か用事があったんだろう?。」

 哲「・・・ダメだコリャ。」

 女の子二人もため息をついている。

 え、僕何か変な事言っちゃった?。

 哲「お前『充実したキャンパスライフとは何ぞや?』って質問してたよな?。」

 僕「『何ぞや?』とは言ってねーけどな。」

 哲「細かい事は良いんだよ。

 ちょっと俺の高校生時代の話をして良いか?。」

 僕「ダメだ。」

 哲「ちょっとだけ聞いてくれよ!。

 すぐ本題に戻るからさ!。

 本題に入る導入にどうしても『俺の高校時代の話』が必要なんだよ!。」

 僕「今回だけ特別だぞ?。

 しょうがないから今回だけちょっと聞いてやる。」

 哲「お前は何様なんだよ!。

 ・・・まぁいいや。

 俺、高校時代にファーストフードでバイトしてたんだよね。

 そうしたら来るわ来るわ。

 放課後リア充共が大勢来るんだよ。

 何がそんなに楽しいのかはわからない。

 ただ一つの真理には辿り着いたね。

 『恵まれた学生ってのは友達と何時間もファーストフードでダベってるだけで楽しい人種なんだ』と。

 つまりお前が求める『充実したキャンパスライフ』はこうやってファーストフードでダベってるだけで20%くらい実現したとは思わんかね?。」

 僕「『思わんかね?』って何でちょっと『良い事言った感』出して、ちょっと満足気なんだよ!?。

 なんで20%って微妙な数字なんだよ!?。」

 内藤「ううん、間違ってないと思う。

 私だってファーストフードで騒いでる人達を見ていつも思ってたもん。

 『何がそんなに楽しいんだ』って。

 『ファーストフードで他愛のない話をする』というのが『青春の一頁』なんだと私は思うな。

 でもそれが『青春の全て』ではないから哲くんは『20%』って表現したんじゃないかな?。」

 哲「その通り!。」

 中島さんもしきりに頷いている。

 これは僕以外の人が感じた事だったらしい。


 僕だって後から考えてみると「こうやってファーストフードで集まって『あーでもないこーでもない』と議論する事が楽しかったし、これが『充実したキャンパスライフ』だ」と思う。

 ・・・で周りの人達から『アイツら、何が楽しいんだろ?』と冷めた目で見られているのかも知れない。


 僕の下宿は大学から近い。

 なので、誰かと帰る・・・と言っても一瞬で家についてしまう。

 「そろそろバイト、探そうかな?」僕は何気なく思った。

 自分の思考にビックリした。

 「いつ大学を辞めるかわからないから、バイトはまだ始めるべきじゃない。」そう思って今の今までバイト探しはしなかった。

 「もう大学を辞める気はない。」いつの間にか僕は心に決めたようだ。

 

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