第二章 高校生編

高校一年生になって初めての夏を迎える。

ドキドキしながらの高校デビューは大成功だった。


暑い日々も少しでも乗り越えやすいようにと、今日から制服も夏服へと変わる。

今までキャラメル色のカーディガンを羽織っていたけれど、今日から暫くこれとおさらばと思うと少し寂しい。


ワイシャツだけになってしまうと少し寂しいので、胸元のリボンを鮮やかな桃色に変えて、少しでも可愛く見えるように試行錯誤を繰り返して夏制服を作った。


『おはよ〜!って、由衣の制服かわいい!』


「でしょ?色々改造しちゃったんだよねー。」


学校について、早々二人でお互いの制服について語り始める。


「のんー!おはよ、夏本格的になってきたねぇ。」


『それな、もう冬恋しいわ…』


「それ冬になったら夏恋しいとか言ってるやつだろ?」


『えへ、ばれた?』


教室へ二人で入ると、他の友人たちがぞろぞろと集まってきて声をかけてきた。

初めの緊張など無意味だったくらいに、私は周りのクラスメート達と仲睦まじくなれていた。


派手な由衣がいたお陰か、私のグループは10人を余裕に超える程の大人数の男女のグループだった。


皆派手な見た目と素行の悪さと打って変わって、とても優しい心の持ち主だった。

一見大人しそうに見えた中学の同級生よりも、この怖い見た目の皆の方がうんと優しくて居心地が良い。


人は本当に見かけによらない。


「ねぇ、のんは俊と二人で夏休み遊びに行かないの?」


『え?うーん…』


そう言って由衣は目線を名前の主の方へ向ける。


速水俊。


彼は私に好意を持ってくれている。

私に人生初めての告白をしてくれたのは彼だった。

見た目は悪くないし、なんならイケメンの部類に入るんじゃないかと思う。

ただ、少し問題点があるとすれば…


「ん?俺の方見てどうかしたー?あ、遂に好きになっちゃったか。よっしゃ、じゃあ付き合うか!!」


『俊のポテチ見てただけだよ、全然好きじゃないから安心してね。』


「辛ッッッ!!!」


このしつこいまでの好意だ。

初めて告白してきてから、まだ半年程だというのに7回告白してきている。


好きでもない人と付き合うのは相手にも失礼だと思うので、私はずっと振り続けている。

けれど、そんな事を気にもしない様子で彼は何度も私に好意をぶつけてくる。


もはやそのしつこさに、最近嫌気がさしているのは内緒だ。


「俊、のんの事好きすぎ。もはやキモいから。」


「あ?キモいの上等だわ、俺の本気度舐めんなよ。」


「乃々果、もう付き合っちゃえよ。俊は俺らの中でもすっげぇ良い男だからさ!」


『ごめんねー、私真面目なタイプが好きだから。ヤンキーは専門外なの〜』


「……黒染めする。」


『うん、黒くしても一緒かな。』


私の発言に、俊はクソーッと叫びながらポテチを一気に頬張った。

そんな彼を見て、皆が面白そうにゲラゲラと笑う。


付き合うとか、恋愛とかよく分からないけれど、もし誰かと恋人になるなら貝塚くんがいいな…って、未だに思う。


中学の一年間の彼の面影しか私の頭には残ってないけれど、大好きだった彼を忘れることは中々できなかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

6年間の片想いが報われたら、10代で妊娠出産して愛した人に人生のどん底に突き落とされた話 宇佐美 黒 @kurousa1225

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ