第一章 中学生編
いつの間にか中学生になってから一年が経っていた。
私と貝塚くんとの距離には相変わらず何の進展も無かった。言葉を交わすどころか、目を合わせる事も無い。おまけに、クラスが離れてしまい接点も何もないのだ。
そして、平穏だと思っていた私の学園生活は豹変してしまっていた。
「じゃあお母さん仕事だから、お昼は適当に食べておいてね。」
『うん。』
しっかりと化粧をして、忙しそうに外へと出た母を見送った後、私は自身の部屋のベットへと横になった。
今日は水曜日。
なんの日でもないただの水曜日。
だけれど私は学校へ行くこともせずに、部屋着のまま布団へと横になっていた。
穏やかで、なんの不自由もなかった私の中学生生活は、いじめによって重く暗く、生きづらい物にへと変わってしまっていた。
いじめが始まったきっかけは、何だったのかもう覚えていない。
けどいじめなんて、そんなものだろう。
ほんの些細などうでもいい事がきっかけで、目の敵にされるのだ。
皆のストレスのはけ口にされた私は、耐えて戦うこともできずに不登校という選択肢を選んでしまった。
学校に行かなくなって、もうどれだけの月日が経ったのか分からない。
でも、私は学校に行くという選択は全く無かった。
あんな所に行っても、病んで自分がおかしくなるだけだから。
友達にも裏切られた私は、学校の中での心残りは密かに思い続けていた貝塚くんだけだった。
入学式のあの日、初めて話した事を思い出す。彼の笑顔は私の中で唯一の中学での思い出だった。
もう一度彼に会いたい…なんて、未練たらしい事を考えてしまう。
『好き、だったなぁ…』
今の自分の惨めすぎる状況に、涙がポロポロと溢れる。
いじめられてきた日々と比べれば、だいぶ精神も安定してきた。
だけど、涙を流さない日は無かった。だって、普通の環境があったなら、私だって学校に行きたかった。
貝塚くんの顔が見たかった。
でも、もうあんな所に行く勇気私にはない。
少しの後悔と、悲しさに暮れながら、私の中学校生活は幕を降ろした。
私の中学生時代は、殆ど一年生の思い出しかない。
もうこんな思いはしたくない。
そんな一心で、自分を変えることにした。
いじめをきっかけに、私は高校デビューを決断した。
長々と語る事もない、中学生時代の話だ。
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