色も感情もない目を持つ君
あ。やあ。
席に座り、腰を曲げて、冷たい机に顔を支えるそうにして腕を置いた。寝るように顔を右に向けた時、私は向かいの君と目があった。
君も私とおんなじように寝ようとしてるの?
返事はなかった。当然だけど。
君はペンギン型のぬいぐるみの筆箱だから。
色も感情も全くないその目は、私を真っ直ぐ見つめてる。
君は海から誰かによって打ち上げられたの?
水がないと辛いの?
海が恋しい?
海に戻りたい?
ペンギンだから、やっぱり海が恋しいんだろうと思う。
あっ。
ガシャッと音を立てて、君の飼い主は、君を掴んでから、冷たい机に君のお腹を叩きつけた。
怖くなって、その瞬間だけは目を瞑っていた。聞こえたのは音だけ。
君はたくさん抱えてるんだね。
それは、ただの文房具?
それとも、君の飼い主の怨念とやらが、君へと伝わって、その音が生まれたの?
なぜか悲しくなってきた。
物に、そんなふうに思うのは変だって思う?
けれど、私は、みんなみんな生きてるんだと思う。たとえ動かなくても、そこには、確かに命が宿っている気がするんだ。
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