自分は小説家。

「自分は小説家です」

「自分は物語を書くのが好きで、書いています!」

「自分は小説を書くのが好きで、書いています!」


色々な言い方があるけど、実際あんまり使ったことはない。なぜならあんまり他人には言ったことがないからだ。

別に隠してるわけじゃないんだけどね。



自分は小さい頃から、物語を書くのが好きだった。

「自分で物語を書くと、自分の好きな場面を展開できる!」

なんて素晴らしいんだろうって心の底から思った。



「趣味はなんですか」

そう聞かれることが嬉しかった。

今、思えば知らず知らずのうちに、自分の作品を宣伝していたのかもしれないけれど、「もっとたくさんの人に読んで欲しい」っていう気持ちは本物だった。

だけれど大きくなってから、その気持ちは恐怖に脅かされた。


自分の物語を読んだ一人の友人が、言ったのだ。

「え?」

最初は分からなかった。もしかしたら何か誤字があったのかなって思った。

だけれど、自分が口を開く前に、友人は続けて言った。

「この物語のようなこと、いつも考えているの?」

この言葉を理解するのには時間をかなり使った。

つまりは、自分の見せた物語が、いつもの自分のイメージと、かなりかけ離れたものであったため、その友人はドン引きしたのだと言う。


そう言われた時から、自分は怖くなった。「誰も自分の物語を分かってくれない」

「また、引かれてしまう」って。

今まで自信満々に「物語を書いている」と言っていたのにもう言えない。言いたくなかった。


けれど、やはり「物語を書かない」なんて出来なかった。考えが溢れ出して、今すぐにでも書きたかった。

そして、その時、自分はインターネット上に自分の書いた物語・小説を投稿することが出来るサイトに出会った。


「物語を書きたい」という想いは再燃して、ますます燃え上がった。


自分は今、幸せだ。

インターネット上に投稿した作品は、全く知らない人が興味を持って読んでくれる。もしかしたら、その人は今、自分がいる地点の反対側の人かもしれない。

自分にどんなイメージがあっても、それをベースに置いて、批評されたりしない。

作品が、一から「作品」として批評されるのだ。


一人でも自分の作品を待ってくれている人がいると信じている。だから、自分はこれからも書き続ける。


自分は小説家だから。

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