鋼の心と引き換えに
「いじめに屈しないために」
そう、心の中で何回も唱えては「はぁ」とため息をつく。
私は現在、いじめられている。
「どうすれば、いじめられなくなるのか」と昔は考えていた。だから、行動や態度を変える努力をしていた。だけれど、何も変わらなかった。
だから「いじめに屈しないためには、どうすればいいのか」と考えるようになった。
誰でも、誹謗されたら傷つく。心ない言葉を吐かれたら、ほんとに心が激しく細かく振動している気がして、鼓動でさえも耳の近くで聞いているかのように、大きく大きく聞こえる。
そして、私はいじめに屈しないために「傷つくことを辞めた」。誹謗されても、もう何も聞こえない。ただの雑音でしかない。私の心はそんなことで、簡単に傷ついたり折れたりしない。もう何にも、動揺したりしない。
私は鋼の心を手に入れたのだ。この領域に達するまでには時間をかなり用したかもしれない。心の中で、繰り返し繰り返し、唱えた。もしかしたら、これは一種の洗脳なのかもしれない、とあとで思った。「自分は傷つかない心を持っている」のだと信じ込ませたのかもしれない。
鋼の心を手に入れた私は傷つくことがなくなった。だけれど、それと引き換えに、小さな喜びや出来事では笑えなくなってしまった。
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