犬さんの目に映る世界

帰り道の途中、いつもの公園を横目に捉えてミィは通り過ぎようとした。


(あれ?)


大きな段ボール箱が視界に入った。


(あんな段ボール箱、いつもはない……)


違和感を感じたミィは、段ボール箱に近付いた。恐る恐る、蓋をあけると、中には小さな子犬が入っていた。


「うわぁ! 大丈夫!?」

「くぅー、くぅーん」


子犬は、弱々しく鳴いていた。


「もう大丈夫だよ!」


ミィは、子犬を優しく抱き上げて、抱っこした。


(家族みんな、わんちゃん大好きだし、きっと大丈夫!)


ミィは自分に言い聞かせるように言った。たとえ、家族が好きじゃなくても、ミィにはこの子犬を見て見ぬフリすることが出来なかった。少し歩いては、子犬を抱え直して、ミィは子犬を家に連れて帰ったのだった。



犬さん、犬さん

犬さんの目に映る世界は私たちと一緒なの?

犬さん、犬さん

犬さんの目には、ミィはどう映ってるの?


ミィ、聞いたことがあるんだけどね

わんちゃんの目に映る世界は私たちとは違うんだって

青とか、黄色とかは見えるらしいんだけど、赤色は見えないとか、はたまた白黒にしか見えないんだって聞いたのね


本当かどうか、ミィには分からないけれど、もし、それが本当なら、ミィからのプレゼントの、この赤い首輪は犬さんにはどう見えているの?

犬さんのね、毛色に合うと思って、ミィが選んで買ってもらったんだけど、それ、伝わっているかな? 伝わってないかな?


ミィのね、髪の毛の色も、茶色っぽくて、犬さんに似ているんだけど、それも、伝わってないのかな?


もし伝わってなかったら、悲しいな……



ミィは、買ってもらった赤い首輪を片手に、寝転んで子犬と向き合いながら、そんな会話を心の中でした。


「出来た!」


赤い首輪を小さな子犬の首に回して付けた。その首輪はやはり、毛色によく合っていた。


「これからよろしくね! チョコ!」


茶色い子犬はチョコと名付けられ、いつも、ミィと仲良く遊びましたとさ。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る