第31話番外編高校卒業後の佐井川と凪沙

「ねぇ、そろそろ彼氏できる頃じゃない。凪沙」

「私にはできないよ、春くんだけなんだよ。ほんとにぃぃっうわあぁぁ」

向かい合って座る親友の遠野凪沙は、両手で顔を覆い隠し、泣き出してしまう。

「泣かないでよ、ごめん。ごめんね、凪沙ぁっ思い出させて」

「ううぅああぁぁ、はるぐぅぅんはるぐぅぅんはあぁるうぅぐっうぅぅんぅぅっ」

周りの視線を気にせず、遠慮なく大声で元カレの名前を泣きながら叫んでいる凪沙。

「大丈夫だよ、大丈夫だからね凪沙っ」

私は、立ち上がり凪沙に近付いて、後ろから抱き締める。

凪沙が泣き止むまで抱き締め続け、彼女の体温を感じとり、声を掛け続けた。


一時間経過して、泣き止み泣き腫らした目もとを恥ずかしそうに隠して、凪沙が謝ってきた。

「ごめんね、ごめんね麻生まいちゃん。高校の頃から迷惑ばかり掛けて、今もこんな姿をみせちゃって」

「私こそごめんね、凪沙を泣かせるようなこと言って。連絡は取れてるんでしょ、香河と。凪沙とよりを戻そうとしないなんて勿体ないよね、ほんと」

「取れてるけど......前みたいにはいってなくて。あの娘と付き合ってなかったら、今も春くんの隣を歩けたのに。私ってなんでこんなになっちゃったのかなぁ」

青空を仰ぎ見て、呟いた凪沙。

「......クレープ食べに行こうよ、凪沙。気分転換にさ。どうっ凪沙?」

「そうだね。この後も付き合ってくれる、麻生ちゃん?」

「凪沙に付き合わなかったことあった?付き合うよ、凪沙に。親友だもん!」

「ううん、クレープを食べに行こう」

凪沙が立ち上がり、私の手を取りテラス席からカフェの店内に戻り、クレープを食べにカフェを出ていく。

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