第24話**人気者の彼と無口な彼女
中学二年のある日の休み時間の教室。
川木沢は、トイレに向かおうと歩いていた。正面から歩いてきた女子がすれ違う瞬間、ぶつかってきた。
「気を付けてくんない。川木沢」
ぶつかってきた彼女は、睨み付けながら言い残し、去っていく。
川木沢は、心がすり減っていくのを感じていた。気を付けて、か。彼女の方からぶつかってきておいて、謝ってくれない。
その場に立ち尽くし、俯いた川木沢。
いつまでこんなことをされ続けるんだろう、私は、陰口や傷つけることなんてしていないのに。私が話そうとしないから、他人と関わろうとしないから、いつも暗いからだろうか。
私の存在さえ、亡くなれば......
「溝口さん。川木沢さんにわざとぶつかってたよね、ちゃんと謝らないと」
「川木沢がぶつかってきたんだよ。私が謝ることなんてっ、何で透は川木沢を気にすんだよ、あんなき──」
「それ以上、言わないで。溝口さん等がいくら嫌っていても、その言葉を口にするのはやめてあげて」
「わかった......よ。何で透がそんな悲しげな顔、すんの?」
「溝口さんには、言ってもわからないよ。川木沢さんには早めに謝んないと手遅れになるよ」
川木沢の後ろで茅透とぶつかってきた女子の会話が聞こえてきた。
茅くんは、優しい人だ。困っていたり、悲しんでいる人には手を差し伸べる優しい男子。クラスメートや周りの同級生とは違う。茅透は、皆に人気で、
私にとって、彼──茅透は、たった一人の
私は、彼の隣で笑ったり泣いたりしたい。
川木沢は、後の高校進学と同時に変貌した。他人に馴染もうと話し方を見直し、長すぎた髪を短く切り、金髪に染め、暗い印象を与えないように笑顔を作り、偽りの川木沢になった。
人気者の彼と無口な彼女は、短い間ではあるが、恋人関係になり──
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