第25話嫉妬深いパーカーの人物
夏のうだる暑さに体力を消耗していた。ショッピングモールのフードコートで、太いフライドポテトとクリスピー、テリヤキバーガーをのせたトレーを確保していた席に運んでいた。
後ろから一人ついてきていた。
俺が椅子に腰をおろすと、ついてきた人物が向かいにある椅子に座る。
向かいに座る人物は、グレーのパーカーを羽織っていてフードを深く被り、はっきりと顔が見えない。
「春ちゃん先輩、ですよね?」
「まず、名乗ってほしいよ。貴方が何者なのか」
左手の甲に浅い切り傷があり、夏花から一度聞いたことがある人物の特徴と一致した。
「そんなことは、どうでもいいんだよっ!」
小さくテーブルを叩く向かいの人物。
「はぁー。ネチネチして嫉妬深いんだね、元カレさん。趣味が悪いね、何を言いに来たのかな?」
「何故、お前みたいな奴が付き合えるんだ。夏花と」
夏花の言っていた通りの男子だった。あのときかな、彼が夏花に恋人がいるのを知ったのは。
ああ、煩わしい、鬱陶しい、面倒臭い、怠い。
彼に憎まれようが、恨まれようが、どうだっていいことだ。
「逆恨みはやめてくれない。俺から告ったわけじゃないからね、夏花の方から言ってきたんだよ──ボコろうって思ってるの、キミは」
俺は、気だるげに、面倒臭そうにありのまま告げる。
「悪いかよ」
「そうしたところで、キミには何も残らないでしょ。そろそろ、顔が見たいけど見せてはくれないかな?」
「お前なんかのどこに魅力があるってんだよっっ!」
彼は、そう叫び、勢い良く立ち上がり椅子が倒れる。
彼は、走り去る前に一言吐き捨てた。
俺には、彼が吐き捨てて言った一言は響きもしなかった。
夏花はよくもまあ彼と付き合ったものだ。
俺が、そんなことを言えるような人間ではないけれど。
俺が夏花であれば、付き合って半日で別れそうだけど。
俺は、立ち上がり倒れた椅子を直してから、座り直してハンバーガーにかぶりついた。
近い内に死ぬかも、めった刺しにされるかもな。
神前が喜びそうだなぁ、そうなれば。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます