第22話あの娘と相対したときの夢
放課後の教室。
俺は、ある一人の女子と相対していた。
俺は、向かい合っている彼女の表情が掴めない。向かい合っているにも関わらずにだ。
彼女の顔にだけ白いもやがかかっている。
俺は、彼女の声音でどういう感情を向けているのかはわかる。
彼女は、消え入りそうな声でこう言う。
──香河も皆と同じなんだね。薄々わかってはいたけど......期待しちゃだめだよね。東江ちゃんに伝えて。
──って、東江ちゃんに伝えて。私はもう......
◇◇◇
そこで、俺は目を覚ました。
今のは、夢か。
そう言えば、彼女に言われたな。彼女の伝言は、神前に伝えることができなかった。
今頃神前に伝えようが、意味はないだろう。
胸がざわついている。
昨日、宇佐見があんなことを言ったからだろう。
──私はさぁ、憧れたんだ。いや、憧れてたかな、あの娘に。
そう言い残し、宇佐見が家を出ていった。
宇佐見の後ろ姿が消えた瞬間、俺は、理解できずに佇んだ。
◇◇◇
俺は、自室を出て、洗面所で顔を洗う。洗顔後の鏡に映る香河春の顔は──だった。
あの宇佐見が、彼女に憧れてた?
宇佐見が、憧れるほどの女子だったのか、彼女がか?
ああ、そうか。神前に似ていたからか、彼女が。それなら、宇佐見が憧れたことに納得する。
俺は、宇佐見から直接聞くため、宇佐見のスマホに連絡をいれた。
『あれっ、ハルから連絡なんて珍しいね。今日もお邪魔してもいいってこと?』
「そうじゃない。昨日の続きを、ね」
『あぁー。やっぱ、追及されるかぁ。言わなきゃよかった』
彼女の声のトーンが下がった。
彼女は、今にも泣きそうな声で言葉を続けた。
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