第21話騒がしいリビング
食卓テーブルに4人前の夕飯が並んでいる。
俺の隣には夏花が座っており、向かい合って座っているのは宇佐見で、彼女の隣には母親という感じだ。
「「「「いただきます」」」」
「あの頃以来ね、可愛い女の娘が食卓に二人もいるのは」
母親が思い出したように呟く。寂しい表情に。
「そうなんですか、お母さん?」
宇佐見がハンバーグを口に運びながら聞いた。
「そうなの。みえなちゃんも遊びに来なくなって、寂しかったわ~」
「これから毎日お邪魔してもいいですか?」
「大歓迎だわ」
「やめろよ」
「嫌っ」
俺と夏花が息があって拒否した。
「どう思います、お母さん。お二人を説得してくれませんか?」
「あらあらぁ、賑やかで楽しいじゃない。嬉しいのよ、私」
ぱん、と手を叩いて頬に手を添えて笑顔で宇佐見の味方をする母親。
母親を味方に取り込むのは反則だろ、宇佐見のやつ。
顔を見合わせ、上機嫌な母親と宇佐見。
「春ちゃん先輩。嫌なんですけど、彼女とは仲良くできない......」
夏花がそう耳打ちしてきた。
「俺も嫌ではあるけど......」
「お母さん、カップルのお二人がこそこそ話してますけど」
宇佐見が俺達のことを気付き、言いつけた。
「何をこそこそしてるのよ~私も気になるわ」
「いい加減ウザいんだけどっあんたら!」
「おろしちょうだいっハル」
俺のハンバーグに宇佐見が腕を伸ばし、ハンバーグと一緒におろしをかっさらっていき、口に入れて咀嚼した。
「おまっ、なにしてんだよっ!ほんとっ!」
「私のあげるからみえなちゃんを怒らないであげて、ねっ春ちゃん」
母親が宇佐見を庇い、残っているハンバーグの皿を近付ける。
「母さん、どんだけ宇佐見が好きすぎんだよ」
「私は、春ちゃんも夏花ちゃんもみえなちゃんも大好きよ」
俺は、深いため息を吐いて片手で顔を覆う。
「宇佐見って大根おろし食べれないんじゃ......」
「えっ、健康のために克服したんだよ」
「へぇ、そうか......」
夕飯を食べ終え、夏花が帰宅したが宇佐見がゲームをしたいとせがんできて、仕方なく付き合うことにした。
「そういやさぁ......宇佐見ってあの娘が今はどうしてるか、知ってる?」
「東江ちゃんと仲良かったあの娘のこと?」
「そうだよ」
「療養中だよ。いや、療養していた......んじゃなかったかな」
「何だよ、はっきりしないのか?」
「もう、あれだよ。その......ハルって気になってたの?いや、違うか。ってずるいよ、もう一戦だよ、ハルっ!」
「そうか......無理に決まってる」
俺は、そう呟いた。
「何か言った、ハル?」
宇佐見に聞かれたが答えず、コントローラーを操作した。
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