恋人との夏休み

第16話部屋で二人

8月。終業式を終え、夏休みが始まって数日。

俺の自室。

ベッドに並んで座って、壁に背中を付けていた。

夏花は、軽く化粧をしていた。化粧する必要もないほど可愛いのに。

「ねぇ、海に行きたいな。暑くて、溶けそう」

「海かぁ......暑さはしのげるけど。日焼けがなぁ......」

隣にいる夏花が、呆れたように深いため息を吐く。

「はぁー。男子なのに、日焼けが心配なんて」

「肌がひりひり痛むのは男子でも嫌なんだよっ、日焼けしたときの風呂は絶望なんだよっぅ」

「春ちゃん先輩らしくない。もしかして、泳げないとか?」

顔を近付け、弱みを握れたと確信したような笑みを浮かべてきた。

「そっ、そうだよっ。悪いかよ」

「悪いとまでは言ってないよ。泳ぐ必要はなくて、涼みたいだけなんだよっ私は!」

「別にプールでもよくない。他に目的があるわけじゃ──」

「違うからっ、私と一緒じゃ嫌なの?」

食いぎみで否定してきた。

「わかったよ。部活でいけないんじゃない、夏花?」

「ふぇ、あぁーっと......そうだった。花火大会の日ならオフだから、朝行けるよ」

「その日でいいか。昼食は、外食にする?」

「もうそんな時間っ?うーん春ちゃん先輩は、作れない?」

スマホで時刻を確認しながら、要求してきた彼女。

「作れないことはないけど、簡単なものならいけるよ。買ってこないと作れないかも」

「わがまま言ってごめん。外食でいいよ」

顔の前で手を合わせる彼女。

彼女は、床に足を付け駆け出し、扉を開け、勢いよく階段をおりていく。

俺は、彼女を追いかけ階段をおりる。

「牛丼を食べに行こっ」

「牛丼の方じゃないだろ、鰻でしょ」

「えへへ、ばれた?明日も部活何だから、食べておかないと」

「会えないのか、明日は」

「へこんでるんですか、春ちゃんせぇーんぱい」

「うっ、うるせぇ......」

うだる暑さの外に足を踏み込んでいく。



今作が好きでしたら、引っ越しで離れたSっ気幼馴染~も読んでほしいです!




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