第14話失敗に終わる仲直り

放課後。

俺は、下駄箱で靴を履いていた。

「あれっ。一人ですか、香河先輩?」

顔をあげると、真瀬がいた。

「そうだよ。部活はどうしたの?」

「今からバイトで」

髪を耳に掛けて、こたえる彼女。

「真瀬さんがバイトしてるなんて知らなかった」

「言わなくてもいいかなと。仲直りはだめでしたか、あれでも」

「受け取ってくれなかったよ。真瀬さんから言ってくれないかな?」

「言ってみますけど......何したんですか、夏花に」

彼女に言いづらい。

別に大したことではない、ただ──。

「真瀬さん、耳を貸して」

「は、はい......わかりました」

戸惑った様子をみせる彼女。

彼女は、首を傾げ近付いてきた。

俺は、彼女に耳打ちして離れる。

「えっと──」

「それなら、すぐに仲直りできそうですけど。心当たりは、それだけですか?」

「ほんとだって」

「信じます、香河先輩を。それとなく言っときます、夏花に」

「ありがとう、助かるよ」

手を合わせ、感謝した。

俺達は、歩きだし昇降口を出たところで、女子が後ろから追い抜いていった。

追い抜かれた際、舌打ちされたうえでひどい言葉を浴びせられた。

「ちっ、女たらしがっ」

言うまでもなく幼馴染みで、低い声で吐き捨てていく。

って、さすがにひどくないか。

日に日に、鋭く尖っていく言葉で、立ち直れなくなりなりそうなんだけど。

「ひどいですね、あの人。香河先輩は、女たらしじゃ決してないです」

気にしないでください、と後輩に言われた。

「ありがとう......真瀬さん」

項垂れる俺を心配する彼女。



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