第12話彼女が照れるように──

数日後の放課後。

俺は、部活終わりの夏花と下校している。

「もうすぐテストですね。春ちゃん先輩はやってますか?」

「そこそこって感じだね。夏花こそどうなの、赤点じゃない」

「それほど落ちぶれていませんっ。バカにしすぎだよ、春ちゃん先輩よりは賢いもんっ!私は」

頬を膨らまし、否定する夏花。

「そうだっけ?中間テストで数学赤点だって言ってたような」

「うっ......ちが、いますよ。そんなことは......」

あははっ、と笑い声をあげてから謝る。

「黙り込まなくてもいいでしょ。誰にでも苦手なものがあって当然だし。落ち込むことないよ。数学苦手だし」

「もっうぅ、春ちゃん先輩はぁぁ。からかってばかりで最悪ぅ」

いじけながら、袖を引っ張る彼女。

「はいはい。ごめんね、夏花。好きなんでしょ、それでも」

「そうっだよっ!春ちゃん先輩のそういうとこも含めて、好きになったんだよ!彼氏である香河春さんは私のどこが好きなんですか、教えてください」

「そうだな......夏花の好きな......ところ、か......」

「......ってすぐに出てくるでしょ、早く言って。一つ目は?」

「すぐに照れて赤くなるところ」

「二つ目は?」

「そうだな、裏表が激しくないとか?」

「もういいっ!からかってばかりでっ──」

俺は、顔を近付け、夏花の唇を奪い、キスをした。

「んんぅー、っはぁ......ううぅ、なっなな何でキスしてっ、きたのっ!」

彼女の身体が震え始め、頬が赤く染まり始めた。

激しく動揺しながら彼女が、詰め寄ってきた。

「夏花の照れたところがみたくて。したくなったからって理由はだめ?」

「もっうー、もうもうもうぉ。なん、でぇ、なんでぇ春ちゃん先輩はぁぁっ!」

頬を赤く染め、耳まで真っ赤に染まって、地団駄を踏む夏花。

「落ち着いて、夏花。深呼吸して、すってーはいてー、すってーはいてー」

彼女は深呼吸して、落ち着きを取り戻した。

「嫌だった?したくなかったの、キス?」

俺は、顔を彼女の顔に近付け、囁いた。

「し、したく、ないわけじゃ......ないけど。準備が、あるから」

恥ずかしそうに俯きながら、小声になって聞き取りづらい。

「わかりきってたら、意味ないじゃん。それに......」

「それに?」

顔をあげる彼女。

「何でもない。疲れただろ、早く帰ろ。夏花」

「ええ。気になるから言ってよっ、早くぅっ!」

「やめたの。シャワー浴びないと気持ち悪いままだろ、早く帰るよ」

俺は、走り出して、逃れようとした。

「待ってよ、春ちゃん先輩っ!」

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