第11話昇降口での面白くない会話
翌日、月曜日の放課後。
夏花は、部活で終わるまで、昇降口近くで待っていた。
遠野さんは、見かけない。すでに帰宅したようだ。
「よっ、香河。いる?迷惑かけて悪かったよ」
目の前で立ち止まり、佐井川さんが飴を渡してきた。
「いいですけど。ありがとう、飴。ぶどう......それより、俺が許せない、んじゃなかったんですか?」
「謝ったけど、誠意が感じなかったかな。根にもってんだね。それはそうか、香河だもんね」
「俺以外でも根には持つでしょ、今度は何ですか、佐井川さん?」
「凪沙、春くん春くんって一日中泣いてるの。ありがとう、凪沙に──」
「愛している人が泣いてるのに感謝の言葉って」
俺は、微笑した。
「わかってるくせに。何で香河はそうやって」
「なら、もういいでしょ。俺に関わるのは、佐井川さん」
「『佐井川さん伝いでも』って聞いたけど。それは?」
「言ったね。もう来るから、待ち人が」
「例の彼女か。お幸せに、香河。香河春」
佐井川さんは、昇降口を抜け、校門から出ていく。
香河春、フルネームで呼ぶ必要がどこにあった?
佐井川さんには何らかの意図があって呼んだんだろう。
『わかってるくせに』、か。早く夏花来ないかな。
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