045 プレゼントとルーレット
「はい! みんな準備オッケー?」
「おっけー」
「は、はい!」
「おう」
「よーし! せーのっ! どんっ!」
南井の掛け声で、俺たちは一斉にテーブルに袋を出した。
ひとり二つずつ、合計八個。
大きさや色はまちまちだ。
食事の後は、南井主催のプレゼント交換をやることになっていた。
正直、この手のイベントは初めてなので、勝手がわからない。
まあ、持ち寄ったプレゼントをランダムで誰かに渡す、という感じなんだとは思うが。
「さて、あたしの超センスいいプレゼントを手にする人は誰かなー!」
「き、緊張しますね……なんだか。喜んでもらえるといいんですけど……」
「まあ、俺のが一番嬉しいだろうなぁ、みんな」
「……なんだこのやたらデカいのは」
南井の前に、一際大きな袋が置かれている。
実はけっこう前から気になっていたのだが、未だに正体は不明だ。
「ふっふっふ……とっておきだぜ、これは! まあ見てのお楽しみだね!」
「舌切り雀を思い出すな」
「こら悠雅っちー! テクニカルなたとえ禁止!」
大きいつづらはハズレだからな、昔から。
「みんな、ちゃんと条件守った?」
「2000円まで、でしたよね?」
「そう! それを二つね! だから、もらえるのも二つ!」
南井いわく、高過ぎてもよくないし、値段を決めた方がおもしろい、らしい。
まあ、あんまり高いものをもらっても気が引けるから、たしかに丁度いいとは思うが。
「どうやって配るんだ? 南井ちゃん」
「ふっふっふ! ちゃんとくじ引きのアプリを入れてあるのだ!」
「おー、さすが準備のオニ」
南井は得意げにスマホの画面をこちらに向けた。
ルーレットのようなものに、8個の項目が設定されている。
なるほど、これでプレゼントを振り分けるのか。
「はいはいどんどん引いてー! 自分のが当たったらもう一回ねー!」
南井の指示で、順番にルーレットを回していく。
俺のプレゼントは早々に南井と春臣に当たり、俺にはその二人から一つずつ割り振られた。
中身がわからないのだから、どれでもいい。
そう思ってはいたが……。
「悠雅っちー大当たりー!」
「……」
南井が持ってきたデカい袋は、あろうことか俺に回ってきた。
両手で丁度抱えられるくらいのサイズだが、妙に軽い。
しかも、やけに柔らかい気がする。
本当になんなんだこれは……。
「中身が気になりますね……」
「嫌な予感はしてるけどな」
「はーい! みんな行き渡った?」
「静樹さんの楽しみだー」
「はうぅ……気に入らなかったらすみません……」
「悠雅っちーのやつ、なんか怖いなぁ」
「絶対にお前のの方が怖いわ」
みんなでわーわー言いながら、それぞれ手元にある袋を順番に開けていく。
だが南井の希望で、俺のデカいのは最後にされてしまった。
もはや開けなくてもいいかもしれない、気持ち的に。
「私が静樹ちゃんからもらったのは……おわっ! すごーい!」
最初に静樹のプレゼントから出てきたのは、茶色いブランケットだった。
手触りがよく、かなり暖かそうだ。
さすがは静樹、センスがいい。
中身は知らないが、俺のデカいのと交換して欲しい。
「やったー! こういうの欲しかったの! 家で使おーっと!」
「よかった……。ブランケットなら、誰にあげても大丈夫かなって思いまして……」
「静樹ちゃんだと思って使うね!」
「えぇ……は、はい」
おい。
なんか危ないセリフだぞ、それは。
「じゃあ次、俺が開けるぞー。悠雅からの愛のプレゼントを」
「気持ち悪い言い方するな」
「オープン!」
春臣が、俺の袋の一つを開ける。
そっちは、たしか。
「……おっ、スマホスタンド」
「へぇ。しかもちょっとオシャレじゃん!」
「素敵ですね。いろいろ便利そうですし」
「実用性重視だ。立てかけたまま充電できるし、角度も変えられる」
「うーん、悠雅っぽい。でも俺、最近風呂で動画見るのハマってるんだよなぁ。実はかなりありがたい」
春臣は思いのほか満足そうだった。
無難に、と思っていたが、こうして喜ばれると悪い気はしない。
「静樹ちゃんも一個開けてー!」
「じ、じゃあ、私は南井さんのを……」
ガサガサと、静樹が袋を開ける。
静樹に渡った方の南井のプレゼントは、まともな手のひらサイズだった。
「え、えっと……これは?」
小さな箱から出てきたのは、ペンギンの絵が描かれた四角い人形だった。
やたらとひょうきんな顔をしており、背中にスイッチが付いている。
「……なんですか?」
「フリッジペンギン! 冷蔵庫に入れとくと、開けた時に喋るの!」
「なんだそりゃ」
「あっ、わかりました! 閉め忘れ防止グッズですね!」
「せいかーい! ひとり暮らしの静樹ちゃんと悠雅っちーには便利かなって!」
「おーい、俺のことは無視?」
「仙波くんはこのペンギンに顔が似てるじゃん」
「ああ、たしかに」
「似てねぇ!」
「あ、でもホントに、ちょっと似てますね。ふふっ」
「静樹さんまで……」
春臣は珍しくガッカリしていた。
でも、わりと似てるぞ、マジで。
「悠雅っちーもひとつ目、オープン!」
「……おっ」
春臣の袋を開けると、細長い箱が出てきた。
これは……。
「タンブラーか」
「へぇー! いいじゃんそれ!」
「はっはっは。まあ俺のセンスだからな」
「素敵ですね! 冬にも夏にも使えますし」
「不覚にも嬉しいな、これは」
家で勉強中は大抵机に飲み物を置いてるので、重宝しそうだ。
デザインも癖がなくて、これなら女子二人に当たっても問題なかっただろう。
その後、プレゼント開封は二周目に入った。
静樹が春臣からのチョコレートセット、南井が俺の置くだけ充電器、春臣が静樹のシャーペンを開けて、いよいよ最後、俺の番になる。
「何度見てもデカいな……」
「早く開けてよー!」
おそるおそる袋を剥ぎ、中身を取り出す。
が……これは、まさか……。
「……かわいらしいですね」
「うーん、悠雅にピッタリだ」
「……どこがだよ」
出てきたのは、デカすぎるクマのぬいぐるみだった。
白い毛並みが柔らかく、わりかし高級感がある。
「予算内で一番おっきいやつにしたのだ!」
「マジでデカいな……」
「悠雅っちーも、その子をあたしだと思って、毎晩抱いて寝てね!」
「……誰がそんなことするか」
っていうか、また問題ありだろ、そのセリフは……。
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