044 クリスマスと好きな人


「クリパだぁーーーっ!!」


 冬休み三日目、クリスマス当日。

 俺たちは静樹しずきの部屋に集まり、例のクリパとやらを開催した。


 わざわざ買って来たのか、紙で出来た赤いサンタ帽を被り、南井が右手を突き上げる。

 相変わらず、テンションの高さがとどまるところを知らないやつだ。

 そして、ソファの上に立つのをやめろ。


 パチパチと控えめな拍手を送る静樹と、口笛を吹く春臣はるおみ

 防音のマンションに感謝だな、こりゃ。


「そして! テストお疲れ様ーーー!!」


「イェーイ!!」


「お疲れ様でしたぁ」


 ああ、そういえばそれも兼ねてたんだったな。

 春臣たちがテストを頑張ったことは間違いないので、今回は俺も拍手しておくことにする。


「いやぁー、全教科赤点回避とか、天才じゃない? あたし!」


「じゃあ南井ちゃんよりいい結果だった俺は神か? おい悠雅、神が降臨したぞ」


「神は死んだ」


「よかったですね、南井さん。それに仙波くんも。二人とも、しっかり勉強していましたから、その成果ですねっ」


「うわぁーん! ありがとう静樹ちゃーん!」


「静樹さーん!」


「いや、仙波くんは抱きつくの禁止だから。悠雅ゆうがっちーで我慢しといて」


「悠雅ー!」


「寄るな、来るな、触るな」


 ただでさえ、暑苦しい空気なんだから。


 その後、静樹が運んできてくれた飲み物で、俺たちは小規模な乾杯をした。

 手分けして買ってきたチキンやらパスタを取り分けて、晩餐を始める。


 思っていたよりも、ちゃんとしたパーティっぽくなっている気がした。


「それにしても、全員クリスマスに予定がないなんて、寂しい限りだな」


「うわー、仙波くん今それ言う?」


「枯れた青春だなぁ」


「やめろー!」


 まったく、元気なやつらだ。


 だがそういえば、春臣はともかく、南井にも特定の相手はいないのか。

 意外なような、そうでもないような。


「来年こそは、かわいくて性格のいい彼女ができますように。お願いしますサンタさん」


「ムリムリ。サンタさんはいい子にしかプレゼントはあげません」


「こんなにいい子なのになぁ」


 春臣はわざとらしく眉を下げてから、骨つきチキンをかじった。

 彼女でもできれば、こいつももう少し落ち着くのかもしれないな。

 少なくとも、うちの教室に来ることは減るんじゃないだろうか。


「静樹ちゃんは、好きな人いないの?」


「えっ!!」


 南井の言葉に、静樹はビクンと肩を弾ませた。

 わかりやすく目が泳ぎ、汗が滲んでいるようにも見えた。


 ただ、南井はなぜだか静樹ではなく、俺の方を見てニヤニヤしていた。

 なんとなくいたたまれなくなって目をそらすと、その先には春臣が待ち受けて、またニヤついている。


 くそっ……なんなんだこの包囲網は……。


「どうなのさー静樹ちゃん! 彼氏いないんでしょ?」


「え、えっと……そのぉ……」


「え、なに? いるの? ねぇねぇ」


「……えぇっと……」


 不思議なことに、静樹は南井に問い詰められても、好きな相手がいない、とは言わなかった。

 ただ、いる、と答えるわけでもなく、顔を赤くしてずっとモジモジしている。


 その様子を見ていると、不思議と俺まで妙な気持ちになってしまう。

 そんな自分の精神状態を誤魔化すかのように、俺は黙々とフライドポテトを食べた。


「まあ、今日はこれくらいで許してあげましょう!」


「……はぁ」


 ため息をついた静樹の背中を、南井がよしよしと撫でる。

 なんだかなにも助かってない気がするが、あえて言うまい。


「悠雅っちーは?」


「……」


「好きな人いるの? 悠雅っちー」


「うるさい」


 悪即斬。

 これ以上、この話はさせない。


「なにそれー! いるってこと? ねぇねぇ!」


「やめろ。大人しくチキンを食え」


「やだー! いや、チキンは食べるけど」


 予想していなかったわけではないが、この展開は嬉しくない。

 それどころか、一番避けたかったと言っても過言じゃない。


 つい最近も似たような経験があったような気がするが、こんな時はノーコメントに限る。

 むしろ、ノーコメント以外は全て悪手だ。


 だが、不服そうに頬を膨らませる南井とは裏腹に、春臣は妙に落ち着いた、穏やかな表情だった。

 俺と目が合ってもなにも言わず、ただニコニコしている。


 おかしなやつだ。

 いや、きっとこいつはこういう時、何をすれば俺が一番嫌がるか、よくわかっているのだろう。


 焦りと、気恥ずかしさ。

 そんなものを掻き立てるには充分すぎるくらい、春臣の視線はわずらわしかった。



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更新遅れまして申し訳ありません

体調不良でダウンしておりました

明日からはまた、いつもの更新時間に戻りますので、よろしくお願いします

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