第0章〜異世界転移〜

第1話

「うわぁ……ここどこぉ……?」


 ガサガサと草葉が擦れる音や、風にそよぐ音。心地よい木漏れ日に、普段なら癒されることでしょうけど……今日は平日の午前中。中学2年の私からすればこの時間は授業中なんですよね。


「うーん……夢じゃなかったんですか」


 両の手を見下ろします。うん、ペンだこがある以外は女の子の手です。つまりいつもの手です。


 でも、左手にはかくかくしたフォントで〈20〉と。


 右手にはおんなじフォントで無〘01〙緑〘01〙と。


 ついでに右手首にはちょっと女の子にはごつすぎる銀色の輪っかがぴちっとくっついてます。


 重さはないんですけど、視覚的に重いです。


「はぁー、これからどうしましょう……」


 とりあえず、こうなった経緯をちょっと振り返ってみましょう。あの話が本当だとすれば、ここは安全でしょうし。


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 気がつけば、クラスメイト+教師や他クラス、先輩さんや後輩さん数名がいる教室が、魔法陣の様なものがぶわーっと教室中に現れました。


 次の授業の準備で教科書をトントンしてた時なのですごくびっくりしたのを覚えています。


 なんか1部生徒からキタコレとか聞こえてましたが、良くは分かりませんでした。


 魔法陣が消えた頃には、気づけば教室ではなく、パソコン室みたいなところにみんな着席していて、パソコンの画面を見ている状態でした。


「えぇ……?」


 トントンしたポーズで固まっていた私は戸惑いながら、目の前の見覚えのないパソコンをじっとみてしまいました。


 ーヴォン……ー


「!ええぇ……クリックしてスタート……?」


 出てきた文章を読み、思わず下を見れば、ご丁寧にマウスパッドまでしかれてるマウスが。


 周りを見渡せば、とりあえずクリックしてる人や、友人と喋ってる子もいる。


 私は友人は同じクラスにいないこともないけど、仲良しな子は別クラスにいるので、とりあえずは1人で進めるしかない。


 画面をクリックすれば、なんかズラーッと文章が。


 目が滑っちゃう……要点だけまとめると、選ばれたので、力の説明と、やって欲しいことを書かれてる。


 やって欲しいことは、戦って、勝って、別の世界で生きること。


 力っていうのは、こっちに世界にある、カードゲームを模したもの。


「カードゲームですか……?トランプとかなら……」


 あ、そうじゃない?いや、わかってますけども。


 私も人並みにゲームくらいはやりますけど、カードゲームとなるとさっぱりです。とりあえず説明を流し見してますけど……ちんぷんかんぷんな言葉ばっかりです。


 あ、なんかこれは大事っぽいのでちゃんと読みます。


『このゲームでは、6色の有色カードと、無色、多色のカードが存在します。』


 色だけでいえば6色あるんですね。無色とか考えるともっと多いんですね。覚えるのが大変そうです。


 って、なんで私は冷静にこの話を信じようとしてるんでしょうか……何かちょっと本調子ではない感じが……


『あなたがたは現在54名存在します。有色のカードの種類に合わせ、各1色のデッキを、9名に配ります。』


 あ、色分けがあるんですか。混色デッキって作れないんでしょうか?それとも、作れるけど、最初は難しいとか、そんな感じなんでしょうか?


『それを繰り返し、全員にデッキを配ります。その後、2時間のルール等の説明の時間を設け、追加で3時間のデッキ編集の時間を設けます。』


 つまり、色分けによるチームでも作れってことでしょうか?ルール説明とかしてくれるんですね。


『なお、色分けをする理由は特にありません。単色の方が序盤はみなさんにとって行動がしやすいであろうための配慮であり、他の色を持つプレイヤーとカードを交換することも可能です。』


 あ、意味は無いんですね。じゃあ混ぜてもいいんですね。でも、この書き方からすると、あんまし推奨しない感じなんですね。


『あなた方の色はこちらでランダムに決めさせていただきます。そのための簡単な質疑応答に回答をお願いします。』


 あ、なんかアンケートというか、診断テスト?が始まりました。なんとなくここは真面目にやった方が良さそうですね。


《次の中から好きな動物を回答してください。》

 ・犬 ・猫 ・狐 ・鳥 ・熊 ・魚


《次の中から嫌いな虫を回答してください。》

 ・蟻 ・蠍 ・蜂 ・蛾 ・蜘 ・蜻


《次の中から好きな言葉を回答してください。》

 ・情 ・薄 ・嘘 ・慈 ・直 ・欺


《次の中から嫌いな熟語を回答してください。》

 ・人情 ・非道 ・虚飾 ・親愛 ・直進 ・予測


《次の中から自分の得意と思うことを選んでください。》

 ・運動 ・遊戯 ・会話 ・共感 ・努力 ・勉強


《次の中から自分には出来ないと思うことを選んでください。》

 ・裏切る ・思いやる ・協力する ・見過ごす ・怠ける ・鍛える


《次の中から行きたい場所を回答してください。》

 ・山 ・沼 ・街 ・平地 ・森 ・海


《次の中から嫌いな天気を回答してください。》

 ・雷 ・曇り ・晴天 ・晴れ ・雨 ・嵐


《次の中からやりたいことを選んでください。》

 ・勝利する ・生き残る ・成長する


《次の中からなりたくない結果を選んでください。》

 ・敗北する ・死ぬ ・現状維持


《以上となります。》


 ほんとに性格診断の心理テストみたいだ……とりあえずポチポチしましょう。


 熊、蛾、情、予測、努力、協力する、森、雷、生き残る、死ぬ……っと。


 これでいいのかな?あ、なんか次の画面に移った。


 えーっと?あ、私は緑デッキなんですね。


 デッキテーマ、内容がさっきので決められたんでしょうか……あ、そうではないんですね。


 あ、なんかズラっと10種類のカードが画面に……


 えー、これから選ぶんでしょうか?


 あ、なになに?


《この10枚のカードは世界に1枚だけのカードとなります。この中から1枚だけ、あなたに差し上げます。この中から選ばれたカードは等級が伝説で固定されます。

 この中から選ばれなかった9枚は、今後入手する機会があるかもしれませんが、入手は困難です。デッキの内容と照らし合わせ、選ぶもよし、直感で選ぶもよしです。

 この画面で選ぶ場合、選択画面へと移ってください。デッキ編集時に選ぶ場合は、スキップを押してください。》


 うーん、カード、それもなんか強いカードを選ばせてくれるってことなんだ。でもまあ、さすがにこの場では決められないよね?周りは……あ、これ強そうとか言って選んでる人もいる……まあ、人それぞれだよね。


 とりあえず私はスキップで。


 あ、質疑応答が終わって、デッキ配布まで待ってだって。周りが終わるまで待機なんですね。


「ふぅ……なんでこんなことに……」


 なんだかどっと疲れちゃいました……はぁ、早く終わらないでしょうか……

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