廃墟群
外に出て目に入ったのは廃墟の数々。どこもかしこも瓦礫だらけだった。
空を見上げると記憶にある青い空ではなくカラフルな空であった。
「わーきれーい」
いや、全く綺麗じゃないんだけどね、なんか汚いカラフル。体に悪そうな空の色。
校門から学校の外に出る。静かで風の音しか聞こえなかった。
「とりあえず歩きますか」
目的も義務もなにもない、とっても自由だ。
「でも何もすることはないって困るよねー」
誰か理性のある存在がいないか私は探し始めた、情報が欲しいからね、やるべきことも見つかるかもしれないし。
「それにしてもゾンビもいないなんて…」
あれから歩いて数時間、人っ子一人見つからない。
風化していては入れる建物も存在しない。どこまで歩いても瓦礫、瓦礫、瓦礫、うんざりだ。
しかも瓦礫の山はそれぞれうず高く積まれていて、うまく遠くが見えない。
「そうだ、なんか高いところに登って何かないか探そう」
周りで一番高い瓦礫の山、多分ビルが崩れたやつ、の頂上へと軽快に登る。
生前ならバランスをとれず落ちてたか、筋力がなく登れなかっただろう。
頂上まで登ると、他の瓦礫の山で隠れていた景色が見えた。
「おおー最初からこうすればよかった」
周りを見渡すと遠くに高い灰色の壁が見えた、遠くにあるにも関わらずとても大きいことが分かる。
「なんだろうあれ、あれかなゲームとかの国の周りにある壁、城壁?だっけか」
ということは壁の中に誰かいるかもしれない。
ヒトがたくさんいるかも。
見た感じとても遠いというわけでもなければ、近いとも言えない微妙な距離。
とりあえず行くしかない、どうか中が廃墟じゃありませんように。
壁まで歩いていると話声が聞こえた。物陰に隠れて耳を澄ます。
するとはっきりと会話が聞き取れた。
「だから、国に納品する物資はこれだけじゃ足りないんだっつってんだろ!」
「でも、これ以上国から離れるのは危険だよぅ」
「二人とも!喧嘩しないで下さい!大声はモンスターにばれますよ!」
「お前だって大声出してるじゃないか!」
どうやら喧嘩中らしい。国という単語が聞こえた、多分あの壁の中にあるのかな?
自身の目で見ていないから確信は持てない。
声のする方に少しづつ近寄る、彼女たちはいまだにその場にとどまり言い争いをしているみたいだ。
目が覚めてから会う初めてのヒト、少し緊張する、緊張を落ち着かせるため音が出ないように注意しながら深呼吸をする。
ゆっくりと足を音を立てて近づく。私の足音に気づいたのか会話が止み、金属や何かがすれる音が聞こえ始めた。
多分攻撃の準備をしているんだろう。まさか姿を確認せず攻撃してこないよね、一応声かけた方がいいかな。
「あ、あの」
「誰だ、ゆっくりと出てこい」
ゆっくりと、曲がり角を曲がり姿を現す。
「え」
驚いた、一言でいうと人間をベースにした異形。そうとしか思えないヒトがいた。
んん、あーなるほど、ネクロマンサーからの知識によると彼女たちもアンデッドらしく、人間からほど遠い身体にに作り替えられてるらしい。
逆に私みたいに見た目がまるっきり人間なのが珍しいみたいだ。
「は、生きてる人間?」
「い、いや、アンドロイドじゃない?この世界で生身で生きてられないと思うし」
彼女が言った通りこの世界で生身の普通の人間は生きていけない。
放射線やら酸素濃度やら有害物質やらで人工呼吸器と放射線防護服を着なければいけない。
つまり、そういったものを付けていない私はアンデッドやアンドロイドということになる。
彼女たちは私が生身の人間と変わりがない見た目をしているため間違えたんだろう。
「ああ、いや、私はアンデッドです、ここからずっと歩いてある学校で目を覚まして、それでここまで歩いてきたんです」
「もしかしてまたネクロマンサーの暇つぶしか?」
強気な少女が言う。彼女は獣のように鋭い目つきをしており、両肩から先が機械になっていた。
両手は鋭い鉄の爪であんなもので切り裂かれたらひとたまりもないだろう。
「え、えと、保護した方がいいんじゃないかな、国は人手不足だし…」
気の弱そうな少女が言う。彼女の下半身は植物の蔓のような太い触手になっており、足の多いタコを思わせる。
上半身は普通の少女に見えるが背中にはライフルを背負っていた。
「味方かどうかもわからないんですよ、我々を騙していたらどうするんですか」
真面目そうな少女が言う。彼女の両足は競技用の義足をさらに複雑にしたようなものだった。
特徴的なのは彼女の頭だろう、頭部左側が抉れるようにぽっかりと穴が開いている。
ええと、らちが明かないな。
「ええと、私本当に先ほど目覚めたばかりで何もわからないんです、ネクロマンサーに与えられた知識も自分から思いだせませんし」
「それは、中途半端に知識を持たされたのね、愉快と娯楽を求めるネクロマンサーならやりかねないわ」
私を作ったネクロマンサーは随分といい性格をしているみたいだ。
彼女たちの話によると知識のないアンデッドを作るとすぐに壊れてしまうため、めったに作らないらしい。
まれに私のような生身に近い見た目のアンデッドがいいるが自身の過去との差異に耐えられず発狂してしまうそうだ。
ほとんどのアンデッドが異形なのは自身はもう人間ではないと気づかせるためでもあるみたいだ。
私が発狂しなかったのはどうしてだろう。
「多分なんだかんだ言って面白いからだと思います」
「はぁ?面白い?こんな世界がかよ」
そう、すべてが滅んだとの世界、希望なんてない世界、モンスターは存在し力のないものは死ぬ世界。
私がなぜ楽しんでいるかというと、ぶっちゃけわからない。
多分つまらない生前を送ってたんじゃないかな、刺激も何もない生ぬるい平和の中生きてたんだと思う。
だからこの刺激的な世界が楽しいんだと思う。だって目が覚めたら廃墟で、武器があってゾンビがいて、それってまるで。
「ゲームみたいじゃん」
その発言に彼女たちは唖然としている。
「あ、あの、ここは現実ですよぉ」
現実だろうが楽しいものは楽しいのだ。
結局私が変わった思考の無害なアンデッドだと思われたらしく、国に戻るので連れて行ってくれるらしい。
そんなんでいいのだろうか、聞いてみたら武装も少ないし、何かあっても自分たちで殺すことができるからという理由らしい。
言っていいのだろうか、まあさっき目覚めたばっかりだし、ゾンビ一体しか殺してないし、武器も大型の拳銃しかないし、でもなんか腑に落ちないなぁ。
私は不貞腐れながら彼女たちの後ろをついていった。
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