第二十五話 兄妹に戻れない

 はーくんが帰ってきてから様子がおかしい。


「どうしたの…?」

「今日…シオンに告白された」

「そっか…」

「でも…僕はシオンとは付き合えない」


葉月は強く拳を握りしめる。

どこか悔しさと怒りを含みながら…。


「かす…僕はかすのことが好きなんだ」

「はーくん…!?き…急にどうしたの」


「今口に出さないと消えて無くなりそうな気がして…」

「大丈夫だよ、私はずっとここにいる」


かすは僕を抱き寄せる。


「謝らなきゃいけないのは私だよ…」

「私ね…シオンちゃんがはーくん好きな事…

気づいてた」

「でも…はーくんが私の事好きって伝えたら…」

「分かってる…僕達は兄妹なんだ」


そう…僕達は兄妹なんだ。血が繋がっていなくても…そのおかげで僕らはまた巡り合えた

一言でまとめられない兄妹関係…僕らは

兄と妹でありながら元恋人なのだから。

そして…また惹かれあった。


「かす……」


突然の告白と罪悪感で気がどうかしていた。

僕はかすのベッドに気を失うように倒れ込んだ。

「はーくん…!?大丈夫…?」



「…ん…朝か…」

「…何で横にかすが…って…ここ…かすの部屋じゃん」


横を見るとかすがスヤスヤと寝息を立てていた。

僕の腕をガッチリとホールドして。


「かす…かすってば」

「ん…?んんー!」

「犬の伸びみたいだな…」

「ここで寝ちゃったみたいだな…悪い」

「いいよ、気にしないで」

「それより…その腕離してくれない?」


「チッ…」


かすみさん?舌打ちしましたよね?

そんな不満そうな顔してもダメだから…これ

見つかったら僕が悪くなっちゃうからね


────────


「お?葉月今日は顔色いいな!」

「色々あってな」


ピロン

誰からのメッセージだ?



「あ…先輩来てくれたんですね」

「シオン…」

「しゅんとしないでください!」


「たくさん泣きましたけどくよくよなんて

できません」

「先輩…かすみちゃんですよね?」

「な…何のことだ?」


「かすみちゃん、好きですよね」

「……あぁ」

「やっぱり…そうでしたか」

「先輩!」


シオンは葉月の胸を拳で叩く。

「幸せにしなきゃダメですから…泣かせたら

私が怒りますから…」


触れる拳が震えている…本当、強いな…

こいつは…。


「私の所…来てくれてもいいですからね?」

「バカ…僕は一途だ」

「えへへ、冗談ですよ」

「もう…女の子泣かせちゃダメですよ」


────────────────────


運命の赤い糸…もしも存在するならば

この世界は幸せで満ち溢れるのだろうか。

僕はそうは思わない…敷かれたレールを辿る

人生…楽しいわけがない。


手繰り寄せるだけの人生なら傲慢な人間は

生まれなかっただろう。

後悔を何度も繰り返してそして僕達は惹かれあった。


12月24日


「はーくん!学校行こ!」

「お…おい!急かさなくても」

「朝から仲がいいわね」

「平和だな」


「ちょ…僕まだ…」


ひんやりと肌に吸い付く寒さが僕たちを襲う。

「寒そうだな…JK」

「かすちゃんは陽キャJKなので我慢します」

「陽…?貴様…光の一族か」

「気づくのが遅かったね…隠のお兄ちゃん」


「かすもこっち側だろ…」

「ん?何か言った」

「鳥肌たってるぞ」

「そういうところには触れないの!」


 やめて…痛いから蹴らないで後パンツ見えてるから足あげないの。

くまさんなんて見えてないから…断じて見てない。


「あ…今日一緒に帰れないかも」

「何か用事か?」

「かのちゃんとちょっとね!」

「夜までには帰れよ?」

「過保護すぎ!クリスマスパーティーまでに

帰るから!」


「それと…はい!」

「クッキー?」

「かのちゃんと作ったの…食べて欲しくて」


プレーンやチョコレートのクッキーはお洒落な小袋に包まれていた。

早速一つ取り出して食べると心地の良い

サクッとした音と共に甘すぎず食べやすい

味が口の中に広がる。


「すげぇうまい」

「良かった…初めてだったから不安だったの」

「店で売ってても疑わないぞ」

「えへへ…褒めすぎだよ!」


満更でもない様子で喜んでいる。

僕の妹が可愛すぎてつらい…お兄ちゃん幸せものです。


最近かすがどうも浮かれている感じがする。

対して僕は明日のことで頭がいっぱいだ。

あれから1年が経ったのか…


きっと僕はまだスタートラインにすら

立てていない──





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