第二十三話 先輩日和

秋晴れを感じさせる日曜日。

僕は約束の場所へと15分ほど早くたどり着いた。


「先輩、ここですよー」


 大きく手を振りながら僕を呼ぶ。

「悪い、待たせたか…」

「いえいえ!今来たところです」


「本当は?」

「20分前からいました」

「それ聞くのはポイント低いですよ…」


 分かりやすい膨れっ面で僕を説教する。

けど待ってほしい、僕だって待ち合わせより早く来たはずなのに…それより早くいるなんて…ひまじ──マメだな。


 シオンに連れられて駅の中へ行く。切符を買ってホームに続く階段を下ると大勢の人が

いた。

 ギュウギュウになりながらもどうにか乗り込む事に成功した──がシオンをドアを背に

壁ドンする形になってしまった。


「嫌だろうが我慢してくれ」

「しっかり守ってくださいね」


──次は○○駅


 アナウンスと共にドアが開くと更に人が

乗り込んできた。シオンと僕は身体が密着

する形になってしまう。

 先輩の身体が──あ…先輩良い匂いする。じゃなくて!心臓の音バレちゃう…聞こえてないかな。


 控えめだがしっかりと膨らみのある胸が葉月の身体に押しつけられる。

お互い気づいているがあえて触れない様に

ぎこちない世間話を交わしていた。


 生憎僕らの降りる駅は終点…このままだと僕の理性も持たないぞ。静まれ…落ち着け

心を無にするんだ──僕ならできる。


「え…!?先輩、無にならないでください!」


シオンの声かけも虚しく終点駅まで状態は

変わらなかった。


「付きましたよ!しっかりしてください」

「あー…お、おう。ありがとう」


 背中を押されながら電車を降りる。

改札をくぐり息を大きく吸う。決して美味しい空気ではないが淀んでいない綺麗な空気

だった。


「先輩こっちですよ〜!」


 言い忘れていたがシオンの行きたい所に

ついて行くと言うことになっている。僕が

予定組むのが苦手なだけなんだが…。


「ここは…ショッピングモール?」

「今日はお買い物日和ですよ!」

「さぁ、早速行きましょう」

「あ…おい!急がせるなって…」


 今日は積極的に行くって決めたんだから…

絶対先輩をドキドキさせてあげますよ!

 私は先輩の手を握って駆け出す。先輩が

何か言ってるけどお構いなしです!


私は先輩モールの中にあるメガネ屋さんに

連れて行く。


「なんだこれ…」

「先輩…知的な雰囲気似合ってますよ!」

「褒め方がわざとらしいな」

「本音なのにいー!」


 でも本当にかっこいいですね…前髪長めの先輩がそれで髪をかきあげるともう──かっこよすぎて辛いです。


「先輩ゲームとかするならブルーライトカットはどうですか?」

「そうだな…ひとつ買ってみるか。シオン

選んでくれないか?」

「任せてください!」


 細い青いフレームのメガネを選ぶと思った通り似合っていますね…我ながら天才です。


「良い買い物したな、シオンがいなかったら

買う事なかったよ…ありがとう」

「素直にお礼言われると恥ずかしいですね…えへへ」



 お店を出てどこに行くかを悩む。

「先輩どこいきたいですか?」

「ん…お、あれはどうだ?」


 先輩が指差す方向を見ると映画館の文字が

示されていた。


「僕ホラー映画見たいんだよな、苦手なら

辞めるけど」



──ほ…ホラーですか…うぅ怖いです…


「い…いえ!行きます!」


──これ…どさくさに紛れて甘えられたり

しませんかね…なんて。


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