第二十三話 先輩予約します!


温泉旅行から帰りいつもの日常は引き戻され

1ヶ月近くが経った。


「まだ暗い顔してるのか?」

「だって…先輩好きな人いるんだもん…」

「聞いてみろって」


文化祭が終わってからと言うものシオンは

ずっと肩を落としている。


「やだぁ…振られたくないよ」

「誰も振られろなんて言ってねぇよ…」

「でも…」


「ナヨナヨすんな!前に進めなくていいのか?」

「うっ…!それは…そうだけど」


ミサキはシオンの腕を引っ張り3組へと連れて行く。


「悪いけど来海さんっているか?」


クラスメイトがかすみを呼んでくれる。


「えっと…って!シオンちゃん?」

「あはは…どうもです」

「どうしたの?なんかあった?」


えっと…あの…などと言葉を詰まらせているとミサキはシオンの背中を押す。


「ほらちゃんといいな」

「かすみちゃん…!先輩の好きな知ってますか!」

「えぇ…っと…」


──まさか自分だなんて口が裂けても言えないよ…義理の兄妹って言うのは知ってるだろうけど…シオンちゃん…はーくんの事。


「んー…分からない…かな?」

「そうですよね…ありがとうございます!」

「私もう少し頑張ってみます」


少しだけ吹っ切れた様子でシオンは胸を鳴らす。

罪悪感からかかすみはズキリと胸の痛みを感じた。


「その息だぜ!私も応援するぞ」

「ミサキちゃん!ありがとう!」


──これで良かったのかな…私…。


「ありがとうございますかすみちゃん」

「え…?あぁ…!うん!」


そう言ってシオン達は教室を後にする。


「かすかす…いいの?」

「…良く…はないよね」



──かすみちゃんも知らないなら私にも

チャンスある…よね。


「あ…!先輩!」

「シオンか…どうした?」

「やだなー可愛い後輩ですよ?もう少し嬉しそうにしてください」


「で?どうかしたか」

「ことごとくスルーしますね…」

「えっとですね…先輩にはお世話になっているのでお礼でも…と」


「別に気にしなくていいぞ…」

「私がしたいんです!」

「いいよ…僕も暇だし」


「やった!じゃあ先輩連絡先…教えてください」


「えへへ…じゃあ後で連絡しますね!

先輩私のことお気に入りに登録してくださいね」

「するか…馬鹿」

「むぅ…とりあえずまた後です!」


敬礼をしてシオンはその場を立ち去る。

──やった…!言えたよ!

良くできました!花丸百点です!


「ミサキちゃん!」

「その様子だと…上手くいったんだな」

「えへへ…」


良かったなっとミサキはシオンの頭を

くしゃくしゃとする。

「やめてよぉ…」

「がんばれよ!」



──そして夜──


「先輩こんばんはです^ - ^」


「おう」


「先輩日曜日とか暇ですか??」


「大丈夫だぞ」


「とりあえず駅前集合10時でお願いします

( ̄^ ̄ゞ」


「はいはい、あざといあざとい」


「素ですぅぅ!」


先輩ったら…絶対に振り向かせて見せるんだから…誰にも負けたく無い…先輩の1番になるために…!



──はーくんに言ったほうがいいかな…でも…余計なお世話だよね…。


「はーくん…あのね…」

「かす…?」


かすみは葉月の胸の中に入る。

「どこにも行かないで…私のこともっと見てて…」


かすの様子が少し変だな…どうかしたのか。

葉月は無言でかすみを抱きしめる。


「はーくん…私はーくんが好きだよ…

どこにも行って欲しくないよ…」

「かす…!僕はどこにも行かない…ここにいるぞ…!」


かすみがボロボロと涙を流しているのを

必死でなだめ…落ち着かせる。


「…ごめんね…急に…」

「大丈夫だよ…何かあったか?」

「えへへ……もう大丈夫…」


かすみが葉月の部屋を出ようとすると

葉月が引き止める。


「かす…!」

「なに…?」

「一緒に寝ないか?」


コクリと頷くと部屋から枕を取り戻ってくる。

2人は布団に入ると部屋の灯りを消して

就寝の準備に入る。


「はーくん…もっとくっつきたい…」

「いいよ…こっちおいで」


「えへへ…あったかいね」

葉月にピトリとくっつきながら

かすみは安心した様に眠りにつく。


──かすの様子…いつもと明らかに違ったな。かすになにがあったんだ…。

僕に出来ることはかすのそばに居続けること…なにがあろうと僕はかすを守る──

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