第二十一話 アニメは煙が邪魔をする
僕達は宿を後にして早速温泉街へと繰り出す。
「どこ行きたい?」
「…どこでもいいよ」
辺りを見渡しながら僕たちは考える。
選んでる時間ももったいないのでとりあえず
片っ端から回ってみることにした。
「これって足湯?」
「私…足湯って初めて!」
40度前後の温かな温度が足に伝わってくる。
じわりじわりと足先から温まる感覚は
初めての感覚だった。
15分ほど入っていると湯気に当たるせいか
顔が赤くなってくる。
「少し暑くなってきたね」
かすみはパタパタと手で顔を仰ぐ。
白い肌はほんのりと赤く染まっていた。
「大丈夫…?次行くか」
「もー少しゆったりお話しててもいいのに…」
不満を口に漏らしながらも僕たちは次へと進む。
途中の道中で温泉まんじゅうを買ったり
期間限定のアイスなどを食べた。
その後も温泉を周り食べ歩きをして過ごした。
宿の夕食はいわゆる海鮮料理で季節に合った
刺身たちが皿の上に綺麗に並べられていた。
「ふぅ…美味かったな」
「かす…聞きたいことがあるんだが」
「どうしたの?」
「か…かすって…彼氏いたりするのか?」
──頼む…!首を横に振ってくれないと
お兄ちゃん寂しくて死んじゃう!
葉月が不安そうに見つめているとかすみは
笑い始める。
「あははっ…!はーくん何言ってるの?」
「私は…はーくんが好きなの…」
「じゃ…じゃあ!最近急に思い出したように
表情が崩れるのは?」
「うぇっ…!?私…そんなことしてた…?」
「してたぞ…ニヘラって感じに」
「…してないもん」
「写真見るか?ほら…こんな…」
「わぁぁぁ分かった!分かったから!」
かすみは手をブンブンと振り葉月のスマホを
拒絶する。
すると…かすみは頬を膨らませ
「なんで撮ってるの?」
「理由が知りたかったから…不安になった」
珍しく肩を落としている葉月に近づき
そっと抱きしめる。
「大丈夫だよ…私はどこにも行ったりしないからね。ずっと待ってるって約束…したもん」
「かす…悪い…疑って」
「しょうがないなぁ!かすみちゃんは可愛くて純粋で辛抱強いので許してあげます」
「純粋…?僕知ってるぞ…夜中1人でR-18の
BL本読みまくってるの…」
「なっ…なんで!?」
「この前起こしに行った時に枕元に大量に
置いてあったから」
「四肢切断は…やめとけ」
「……返す言葉もない」
「ほ…ほら!はーくんも百合系読むでしょ?」
「悪いけど僕…16歳までのやつしか読まないから」
ドヤ顔でかすみに言うと頬を引きつらせ
あからさまにドン引きしていた。
「うわぁ……」
「誰が大人の百合なんて読むんだ?
否…ありえない」
「やっぱ…気持ち悪いね」
「四肢切断に言われたくないね」
「1冊だけだもん!」
「後…!BLは少女漫画って聞いたことない?」
「確かに…ヲタ恋で言ってた気が…」
「今度…読まない?」
「ソフトなやつで頼む…」
かすみは葉月を引き摺り込むことに成功した。
かすみの対話術が 1上がった。
その後も百合だのBLだの討論を交わしていたが時計を見ると23時を示していた。
「もうこんな時間か…」
「せっかくだし内風呂にでも入ってみるかな」
「あ…!私も入る!」
「馬鹿いえ…許さん」
ズビシと頭にチャップを入れてツッコむ。
「あう…冗談だよぉ…」
「大人しく待ってろ」
かすみは鞄から携帯ゲーム機を出して遊び始める。
──全く…思春期の男子(童貞)の気持ちも
考えろって…。
それにしても内風呂付きなんて立派だよな…
昔ながらって感じがして風情がある。
「かすの気持ち…聞けて良かった…
色んな表情のかすも見れたし…なんだかんだ旅行に来て正解だな…」
20分ほど入って後に湯船から出る。
「かす…いいぞって…寝てるし」
敷かれた布団の上で大の字になって寝ていた。
葉月はかすみの体を持ち上げて布団の中に入れる。
髪の毛を乾かし…喉を潤すとかすみの横にそっと入る。
スヤスヤと寝息を立てるかすみを横に部屋の灯りを消す。
暗闇の中葉月はかすみに近づきそっと唇を
触れさせる。
「大概僕もずるいな…」
鼓動が早くなる心臓を抑えて葉月も眠りにつくのだった──
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