第十六話 寂しさの反動

文化祭1週間前になると一日使って準備を

しはじめる。


ある生徒は買い出しを、またある生徒は

必死に看板などを作っている。


そしてまたある生徒は…


「くそ…」

「先輩、疲れちゃいました」

「もう少しだけ…それで終わるから」

「やる気出ませんよー」

「分かった。終わらせたらジュースでも

買ってやるから…」

「シオン!頑張りますよー!」


校内が活気あふれる中、会計担当の2人は

淡々とキーボードを打ち続けるのだった。




「かすみちゃんちょっと良いかな?」

「メイド服作るからこっち来て

スリーサイズ計らせてくれる?」

「分かった今いくね」


「はい!終わったよ」

「かすかす見て!メイド服の試作品させて

もらったの」

「おかえりなさいませご主人様…!

なんてね」

「かのちゃん…」


かすみは肩をポンっと叩くと

「動かないで」と言い写真を撮り始める。


スタイル抜群のかのは胸元が少しキツそうな

物の天真爛漫なドジっ子メイドの言葉が

とてもよく似合っている。


「あぁ…俺もご奉仕されてぇ」

「ポヨポヨ…一度でいいからポヨらせて

くれぇぇぇ」

「デュフ…たまらないですな」


「木原さん見てないで手動かしてよ」

「何だよ僻んでるのか?」

「黙らないと…」

「ひぇ…悪かったって!」


「私はーくんの所行ってくるね」

「行ってらっしゃい〜」


会議室に向かうと死んだ魚の目をした葉月と

かすみは初対面のシオンがいた。


「はーくん…?」

「かす……助けてくれ…死ぬ」

「え!?ちょ…」

パソコンの前でうつ伏せになり呻き声の様な

声で助けを求めていた。


かすみが戸惑っていると横にいたシオンが

むくりと起き上がった。


「先輩は今仕事が終わってお疲れなのです」

「えっと……」

「私、悠木シオンです!

仲良くしてください!」

「来海かすみです…」

「かす…頼む飲み物を…」

「ごめん!ちょっと待ってて」


小走りで自販機に向かい緑茶を2本買うと

会議室へと戻る。


「はーくんお茶だよ。飲める?」

「ありがとう」

「後…シオンちゃんも…お疲れ様」


「わ…私の分もですか!?」

かすみはコクリとうなずく。


「ありがとうございます!」


お礼を言うとシオンは嬉しそうにお茶を

飲み始める。


「あぁっ…!生き返った」

「はーくん達いつからやってたの…」

「朝からずっとでしたよね?」

「正確には朝のHRが終わってからは

ここから出てない」


「身体壊しちゃうよ!」

「自分を大事にして」


「悪い…けどこれで久々に一緒に帰れるぞ」

「5時過ぎてるし帰るか?」

「シオンはどうする」

「あ…私はクラスの方に顔出すので遠慮しておきますね」


「そうか」とだけ言い残しその場で別れる。



「久しぶりだね2人で帰るの」

「寂しかったか?」


葉月は冗談半分でからかってみる。

するとかすみは身体を寄せピタリとくっつく。


「うん…少し寂しかった」

「そ…そうか」

「だから…お家帰ったら少し甘やかして…」


僕はその様子がたまらなく可愛かった。

高鳴る心臓を抑えながら早足で家へと向かう。


家へ着くとかすの部屋へと向かう。

部屋に入るとかすがピタリと背中にくっ付いてきた。


「…もう待てないよ…」


僕は振り向いて頭を撫でる。なんだか猫を撫でているような気分になってきた。

そのまま腰に手を回して抱き寄せる。


いつもなら動揺して「え…!?はーくん」

とか言うんだろうが生憎今は甘えモードだ。


されるがままに身体を預け

時折気持ちよさそうに声を漏らす。


「満足したか?」

「えへへ…うん!」


かすみは目を閉じて何かを待つような仕草をする。


「今は…兄貴だろ」

「ちぇ…つまらないのー」


不服そうに言うが約束の事もあり素直に

引き下がるのだった。



次回


文化祭③.⑤ 〜あざとい後輩〜

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