第二章
第十四話 メイドデビュー!?
いつもの道が赤と黄色の葉で彩られ
僕たちの登校に新鮮味を与えてくれる。
時折吹いてくる風は
ひやりと冷たく思わず目を瞑りたくなる。
「今日も寒いね」
「あぁ…スカートって寒くないのか?」
「むぅ…寒いけどこれがJKだから!」
「僕は来世はロリになってもJKには
なりたくないな…」
「はーくん…朝から気持ち悪いよ」
「一生甘やかされてぬくぬく生きていたい…」
「うわぁ…」
ゴミを見るような目で葉月を見る。
ロリコンって度を過ぎると
ロリになりたいとか言うんだ…。
「いいか?
そもそもロリコンならまだいいだろ…?」
「世の中には…アリスコンプレックスと言う
ロリよりロリな子を好きな人種もあるんだぞ…?」
その後も学校に着くまで謎理論を聞かされた
かすみはどこかゲッソリとしていた。
「かすかすおっはよー!」
「あ…かのちゃん。
おはよー」
「どうしたの?元気ないね」
「ちょっと疲れてるだけだよ」
「そんなかすかすには…」
「うちの新作ケーキをあげましょう!」
かすみは重たい身体を持ち上げて
目を半分程開ける。
「生クリームじゃなくて苺のクリームを
使ってみました!」
確かに…ピンク色のクリームが女子心を
燻ってくるね…流石かのちゃん。
かのからフォークを差し出され
早速一口食べてみる。
「んっ…!このクリーム凄く甘そうなのに
中に苺の酸味があるから全然しつこくない!」
「今季のテーマはギャップなの!
どう…?ギャップ萌えした?」
「うん…!元気出たよ!」
「やっぱ…かすかすは笑顔じゃなきゃね」
「葉月!」
「…篠崎か」
「何ニヤニヤしてるんだ?
気持ち悪い」
「ひっでぇ!」
「そんな事は置いといて…」
篠崎は丁寧に包装されたプレゼントを
葉月の前に出す。
「…僕の誕生日はまだだけど?」
「まぁまぁ!開けてみろって」
葉月は言われるがままに包装紙を開くと…
「こ…これは!」
「渚たんのフィギュア…!」
「約束…守ったぜ」
「流石親友だよ…僕は信じてた」
「よせよ…皆がいるだろ?」
「最高だよ…」
「葉月…」
「渚たん!」
「そっちかよ!」
かくして2人の日常が今日も始まっていくの
だった。
「え…文化祭?」
卵焼きを口に入れながら聞き返す。
「そうだよ!
私はお化け屋敷やりたいなー」
「んー…私は…なんでもいいかな」
「かすかすってメイド服とか似合いそうだよね」
「き…急にどうしたの?」
嫌な予感がした
かすみは恐る恐る聞き返す。
何か企んだ笑みを浮かべるかのは
「べっつにー」とニヤニヤしながらかすみを
見つめていた。
「お前ら…今年も文化祭の季節だ」
「はい!」
勢いよく1人の男子が手をあげる。
「俺は…メイド喫茶が良い!」
男子達からは「よく言った」、「神よ…」
と称賛の声が飛び交っていた。
「そんな…先生ダメですよね?」
かすみがダメであって欲しいと
願いながら問いかける。
「問題ないぞ…」
「そんなぁ…」
「それで…?他に案は」
「ないなら決まりだな…」
「異論は認めんぞ…面倒くさい」
先生の一声で私のクラスの出し物が
決まってしまった…。
意外と乗り気な女子たちは
「どうするー?」
「おかえりなさいませーとか言うやつでしょ?」
とスッカリその気になっていた。
「私は…かすかすのメイド似合うと思うよ」
落ち込んでいた私の肩をポンっと叩き
励ましてくれる。
「かのちゃん…私…自信ないよ」
「私もやるから!ね…?」
うぅ…かのちゃんの隣に立つと
胸が…胸が痛いよ…。
ボイーンとペターンならボイーンの方が
いいじゃん…?
「メイド巨乳制度…ないかな…」
「なにそれ?」
「あ…なんでもないよ」
メイド服はと言うと。
ゴシックやフレンチなど様々な種類の
メイド服を着て楽しんでもらう事にした。
「はーくん…私メイドだって」
「メイド喫茶ってことか?」
「うん…でも私絶対似合わないよ」
「僕はそんな事ないと思うぞ…?」
「かすは可愛いんだから自信持て」
「お兄ちゃんが保証する…!」
「本当に…?本当に私可愛い…?」
「あぁ…!嘘はつかない」
「もういっかい…」
「もう一回可愛いって言って!」
葉月は若干戸惑いつつも
「可愛いぞ…かす」
「もっかい…」
「可愛いぞ…!」
自分でも顔が赤くなってるの分かる…
でも…私吹っ切れないと恥ずかしくて無理だもん。
「わ…分かったから!」
「もう…恥ずかしくなっちゃった」
「えへへ…ありがとう」
「そ…そうか」
「そういえば…はーくんのクラスは何するの?」
かすみは恥ずかしさを紛らわせるために別の話題を振ってみる。
「残念だけど…本番まで伏せとけって
言われてるんだ」
「えぇー…聞きたかったのに…!」
「当日僕のクラスに来てくれるか…?」
「かのちゃんと行くつもりだよ」
「本気の僕を見せてやる」
どこか自信満々な葉月のバッグからは
渚のフィギュアが顔を出していたのだった。
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