第四話 入学式


2人での夜から1週間が過ぎ、

かすみの入学式の日がやってきた。

葉月と同じ高校に通う予定なので在校生で

ある葉月は先に行って会場準備をしている。


「お父さん!お母さんどう?」


かすみはリビングへやって来て新品の制服を着ている。

くるりと一回転して感想を求める。


「よく似合ってるじゃないか」

「うん、とても似合ってるわよ〜!」

「えへへ…ありがとう」


かすみは鞄を持ち家を出る。

新入生は保護者とは別に登校して先に

クラスなどを把握しておかなければならない。


「行ってきます!」


両親に見送られながら家を出た。

高校までは徒歩10分ほどの近場でその途中

には桜並木が並んでいる。


高校につくと玄関前にクラス表が張り出されている。

自分のクラスを確認して教室に入る。

ガヤガヤとしていたが皆お互いの顔色を

伺うような感じがする。


「お…やったぁ」


かすみは1番後ろの自分の席に座り時間まで

スマホをいじる。


「新入生揃ってるか?」

「私が1年間お前らの面倒を見る【沢田】だ」


カッコいい感じの美人だけど…目に覇気が無いなぁ…。

悪い先生じゃなそう…。


「ねぇねぇ…あの先生かっこいいね!」

「ふぇっ…!あ…うん」


急に前の席の子が話しかけてきてかすみは

戸惑う。


「ごめんね…?私は木原かのだよ」

「私…来海かすみ」

「よろしくね!」


コミュ力高いなーこの子。

コミュ障バレたら高校生活が終わる…!


「ほら…新入生ー。廊下に出て名簿順に並べ」

「お喋りは入学式が終わった後に腐るほどやればいい」


ぞろぞろと各教室から生徒が出て並び始める。

そのまま入学式の会場に入り、上級生や先生からの拍手を浴びながら入場する。


先生の長い話と新入生代表の挨拶が済むと

退場をする。


「いやぁ〜、お話長かったね」

「かのちゃん…ずっと寝てたよね?」

「あはは…バレちゃった?」

「まぁ、すぐ横に座ってたし私の肩を枕にしてたもん」

「安眠!」

「肩が痛いよ!」

「かすちゃん面白いね!LINE交換しない?」


来た…!リア充イベント。


「いいよ、明日になったら私放置するとかやめてよ?」

「しないよー!お弁当一緒に食べようね」

「うん…!」


沢田先生の話を終えて玄関に出る。

玄関には葉月が待っていた。


「入学おめでと」

「はーくんがいるとはね…くっ…!」

「本当にクッころさせるぞ?」

「すいません許してください」

「父さんたちが待ってるから行くぞ」

「あ…待ってってば!」


「改めてかすみ、入学おめでと〜」

「お母さんありがとう!」

「そうだ…!葉月くんと一緒に写真でも

どうかしら?」

「え…母さん。僕はいいですって」

「遠慮するなよ、な?」


父さんが強引に僕の背中をはたき結局

撮ることになった。

定番の入学式の看板の前で僕たちはぎこちないピースをして写真を撮る。


「えへへ…」

「なににやけてるんだ?」

「はーくんには関係ないでしょ!」

「ふん…気持ち悪いなぁ」

「なっ!可愛いでしょ!?」

「顔はな」


冗談半分で放った言葉に対して容姿の良さを認めてもらえるコメントが返ってくるとは

思っておらずにかすみは顔を赤くする。


「照れてるのか?」


かすみをからかうように葉月は言う。


コクッ


かすみは俯いたまま頷くと葉月も顔をそらす。


「その反応は…ダメだろ」

葉月は誰にも聞こえないように、

「クソっ…可愛いかよ」

と、ぼやく。



気まずい空気が流れると両親から手招きされ

車に乗り込む。

2人は後部座席に乗り込むと無言のまま車が発信する。


少し走っているとかすみは葉月の服の裾をクイッと引っ張る。


「どうしたの?」

「手…ちょうだい」


葉月は言葉の意味が分からずにかすみの前に手を出す。

かすみはシートの上に置いてと、伝えるようにポンポンと叩く。

ジェスチャーのままに手を置く。


かすみは無言のまま葉月の手を握る。


「かす…何してるんだ」

「父さんたちにバレたら…」

「お願い…少しだけ」

「…少しだけだからな」


されるがままに握られる葉月。


「はーくん握り返してくれないの…?」


声のする方に振り向くと

かすが上目遣いでこちらを見ていた。

やめて!

可愛い子にそんなことされるの

慣れてないのお兄ちゃん!


「あ…いや…それは…だな」

「ダメッ…?」


かすみのおねだりに負け葉月はギュッと

握り返す。


「満足か?」

「えへへ…うん」


全く…だらしない顔しやがって

僕以外にこんな顔をする日が来ると思うと。

やめよう…胸が痛すぎて張り裂ける。

僕はかすを渡したくないんだな…結局。


自然とかすの手を握る力が強くなる。


「ちょっ…!はーくん!」

小声で訴えるが葉月の耳には届かない。


「はーくんってば…!」

「お家着いたよ」


葉月は我に帰ると慌てて手を離す。

かすみは少し物足りなさそうな顔をしていたが葉月気づいていない。


「2人ともお疲れ様」

「明日からはお弁当も増えるわね〜」

「大丈夫だよ、母さんの料理は美味しいんだから」

「もう…あなたったら!」


「父さん惚気るのは家の中にしてくれ」

「ん?あ…あぁ、悪い悪い」


父さんと母さんは先に家に入り

僕とかすだけが外に残る。


「はーくん…明日からは一緒に行ける?」

「目的地が一緒だからな。行かない理由は無いな」

「かすが嫌じゃないならだけど」

「私は全然いいよ?」

「そっか。なら、明日から一緒に行こう」

「うんっ!」

「早く中に入るか、父さんたちが待ってる」


「後、今日僕は再放送のアニメを観るから」

「奇遇だね私もラブライブ!を観る予定なの」

「一緒に観るか?」

「観る!」

「時間になったら部屋においで…?」

「分かった!」



約束をすると2人は家に入る。

夕食を食べて風呂に入り準備万端の状態に

なるがまだ時間がある。

リビングでソファに座りながらアイスを食べてTVを見る。


「もうすぐ始まるから部屋に行くか」

「お菓子持っていくから先に行ってて」

「分かった」


葉月は先に二階へと上がる。

かすみはスナック菓子とジュースを用意する。


「お父さん、お母さんおやすみ」

「おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」


「はーくん?開けて」

「来たか…そこらへんに座ってくれ」










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