第五話 コレカラ


僕はかすをベッドの上に座らせてTVを付ける。

今日やるのは5周年を祝った映画だ。


「遂に…はじまるね」

「あぁ…」


各学年のユニット曲、AAやSDSに僕光。

僕達は流れるたびに涙をする。

用意していたはずのティッシュを全て使い

切ってしまった。


「はぁ…よ…良かったわ」

「最高だったね」


時刻を見ると時計の針は12時を回っている。


「私、そろそろ行くわね」

「ちょっと待て!」


僕は誰かが二階に登ってくる足音を察知した。

方向からして僕の部屋に向かってきている。


「葉月?あぁ…もう寝たのか」


咄嗟のことだったので僕はかすをベッドの中に入れその横に寝る形になった。


「ちょ…近いんだけど」

「我慢してくれ…それと膨らみが不自然だからもう少し近づいてくれ」

「…もう。これでいい?」


かすみは葉月に身体をすり寄せて

密着する。


「悪いな…父さんが出ていくまで待ってくれ」

「葉月?全く…またアニメ観てから寝たな」


父さんは机の上にあった袋菓子やジュースの

後始末を始める。


「お父さん全然帰らないじゃない…!」

「くそ…いつもならすぐに出ていくのに」


しばらくして父さんは部屋を出て行った。


「かす?もういいぞ」

「ぷは…!布団の中って暑いよ」


かすみは胸元をパタパタと空気を送り込む

ように服を仰ぐ。

「あ…はーくん今見たでしょ?」

「断じて見てはいない…!」

「うそ…本当の事言ったら許してあげても

いいよ?」

「ちょっと見てました」

「エッチ…」


かすみは葉月の耳元でささやく。

小悪魔っぽい笑みを浮かべて葉月を挑発していた。


「僕だって男だ。いいか?学校では絶対にするなよ?」

「なんで?はーくんが困るわけじゃないよ?」

「見られるのは私だもん」

「う…それは…そうだけど」

「それとも見られて困る事でもあるの?」

「……だ…から」

「ん?聞こえないよ」

「かすが他の男にそんな風に見られるのが嫌だから」

「聞こえたか!?もう一回言おうか?」


顔を真っ赤にしてやけくそでかすみに言う。


「わ…分かったから!もう…いいから!」

「私のことそんなふうに思ってたんだ…」

「仮にも!妹だからな」

「妹…かぁ」


かすみの胸が針で突かれたような痛みが走る。

私…妹嫌いかも。


「えへへ…妹だもんね」


どこか切なげな笑みを浮かべるが葉月がそれに気づくはずもない。


「じゃあお兄ちゃん」

「急にどうした?」

「お兄ちゃんは妹の願いを叶えるものです」

「大抵なら叶えるぞ?」

「だからお兄ちゃんは妹と一緒に

寝るのです」


「は…!?お前何言ってんだ…」

「…叶えてくれるんでしょ?」

「ぐっ…しかしなぁ」

「かすはもうJKだぞ?

僕は立派な高校生だしな」

「立派な高校生はロリコンじゃないよ?」

「…返す言葉がない」


強引ではあったが2人は一緒になることになった。


「僕が何もしない保証はないぞ?」

「いいよ…?はーくんになら何されても」

「冗談を…い…」


かすの言葉に驚き目を見る。

その真っ直ぐな瞳は何もして来ない信用か

何かをしてくれる信用か…。

僕には分からなかった。


「と…とにかく!寝るだけだからな!」

「わかってるよー」


そうして2人は再びベッドに入る。

「かす…!何してるんだ」

「少し寒いの…いいじゃない」


かすみは自分の身体をすり寄せ足を絡める。

2人とも裸足だったため温かさや冷たさが

ダイレクトに伝わる。


「はーくんの足温かいね」

「わざわざ絡める必要はあるのか?」

「いや…だった…?」


上目遣いで僕に訴えてくる。

この目をされたら嫌だなんて言えるはずがない。

最も嫌より嬉しい感情が勝っていたからだ。


「そんなわけないだろ…」

「僕はかすの事を嫌いにならない」

「えへへ…そっか」

「嬉しいな…」


かすみは葉月の言葉を聞いてギュッと抱きしめる。

葉月も抵抗することなく包むように抱きしめた。


「ねぇ…はーくん」


2人の間に言葉は既にいらなかった。

どちらからともなく唇を重ね、

求め合うように抱きしめる。


「かす…」

「うん…いいよ」


兄弟であることを忘れ…元に戻ったような

幻想にハマる。

2人がキスをして舌を絡めようとしたときだった。

ブルル ブルル


かすみのスマホのアラームが鳴った。

2人は一気に現実に戻されると

自分たちが何をしていたかを思い出し目をそらし合う。


「え…と…ごめんね」

「僕こそ…歯止めが効かなかった」

「今のことは内緒…だな」

「そうだね…」


ベッドに入り今度は背中合わせで眠る。


くそ…心臓の音が聞こえたそうだ…

動揺してることがバレたら…。



どうしよう…私…はーくんが…



進みかけていた兄弟の歯車は動きを鈍らせ、

止まっていた恋愛対象としての歯車の片方は

再び動き出すのだった…。





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