3章9話 - Bの悪魔
「てめえ、
「私に偉そうなこと言っておきながらこのざまなんて、ふざけるんじゃないわよ!」
不器用すぎて
そう、
殴り飛ばされたのは、半人半魔の吸血鬼。
きらめく黄金の
「……ああ、くそ。よく来たなお前ら――ってもう正気だっつーの」
「あら残念。あと百発くらいは殴ってあげてもよかったのよ?」
「なんならどこぞのコウモリ野郎がしたみたく、全身、
黄金の青年少女はそれでも
「なあ、アベル。お前とならバッドエンドを迎えてもよかったんだ。本当にな。……でもさ、俺はお前の支配者でいたいわけじゃない」
こんな地獄を
けれどいつか〝親友〟に語った言葉は嘘じゃない。
「今みたいにさ、相手が馬鹿やったら殴ってでもとめるっつーの? 俺はずっと、お前とそういう……対等な親友になりたかったんだよ」
本当は
否定はしない。相手を傷付けないことが優しさのすべてではないように、愛しているという想いのもとで
「さてと、シャロン。遅くなったな。これがあのときの答えだ」
ゆえにナオは
唯一絶対の行動原理を。
「俺の目的、俺の信念は――〝傷付けてでも、そいつを幸せにする〟こと。イスカリオテのユダがキリストの真の願いを
共依存の世界は、
闇が
後悔はない。未練もない。だがやるべきことは終わらない。元々いた領域、元々いた地獄もまた、別種の地獄であることに変わりはないからだ。
すなわちバベルの塔を得て、あらゆる
「あら、まさかあの地獄から抜けだせるなんて。少々あなたがたを見くびっていたようですわね」
三千世界の王となった
「せっかくお戻りいただいたのに申し訳ないのですが――さあ、
〈
だがシャロンは
まさかローズのいる
「
みずから
〈記憶の操作・改変〉能力にならぶ吸血鬼の特徴が〈体液の操作〉。より正確にいうならば、体液中に自身の生命力を分散させ、自由自在にあやつることができる。
ならば、いくら
「ぐっ……! だが血液すら石化させてしまえば動けまい……!」
「
土は土に
「――効かねぇなァ! 〈
当然、無策であろうはずがない。バジリスクには石化の魔眼によって
だが
それでも反撃の
「おっと、それが薔薇に隠した秘密とやらか?」
それはシャロンすら見過ごしていた、今に
――Cosa c'era ne'l fior che m'hai dato?
(なにが隠れていたんだい、キミのくれたこの花に)
――Forse un filtro un arcano poter!
(媚薬、それとも秘密のちから?)
そんな
「さて、すっげえ今更なんだが、ここいらで自己紹介させてもらうぜ。なにせ俺たちは今日が初対面なんだからよ」
いくらなんでも場違いに程がある。まるで新学期の
だがこれこそが彼の本質なのだと、ようやくシャロンは理解した。
「生まれは
半吸血鬼であること。
裏切りの騎士であること。
「――〝
日高直紀という人間であること。
皆守紘の親友であること。
そのどれもが彼にとって
決然たる言葉はそれだけで
「……いいでしょう。そこまで言うのならば、わたくしも名乗らぬわけにはいきません」
「我が名はローズ・B・ウェブフィールド。
王城第五席〈
さながら舞う花のごとく、
「――〝
それこそ〝
〝ローズ〟と〝バビロン〟を両立させた、
「
石化の邪眼をもち、薔薇の花をささげた者の願いを聞き届ける
真紅の王冠、真紅の
ミルトンをして「堕天使のなかで最も
中世欧州における
メソポタミアにおける失明の象徴、
ユニコーンの対存在、不純をつかさどる二角獣バイコーン。
彼らすべてが〈赤〉〈騎士〉〈薔薇〉〈淫欲〉のどれかに結びつく。七悪魔とバビロンをふくめた合計八つのBが、女神イシュタルを象徴する
だがいくら強固とはいえ、繋がりがわかるなら
「
シャロンが〈世界再構築〉する気配を察して、カインたちが
敵対して強さを実感したからこそ、……そしてこの戦いに
「性愛と戦争の女神イシュタルよ
天の
地の闇、
「
あゝ 地獄の門を欲す
こしかたゆくすえ
だが今は違う。たとえカインの
「我、
其の
我、
其を待ち受けたもう七つの門にて
其の所有物をあたら
其は植物のごとく枯れ落ちると!」
彼らすべてが〈赤〉〈騎士〉〈薔薇〉〈淫欲〉によって繋がっているということは、彼女を構成する一部であるということ。ならば〈イシュタルの冥界くだり〉と鎖で繋ぎ、その破壊をもって彼女を
「――I drive the wedge of my name "Cain"
(我が名カインを
シャロンの〈
「into words that rhyme with cursed
(この
and reinforce the strains of the chain's reins again
(
only revenge can quench my thirst
(復讐のみが我が
maximum attack and wane attach importance to be quick
(
heaven deign to show us, you will be judged at a great lick
(
I've got chains of having a golden shine
(我は
your herds at bedtime cannot burst
(
profane prostitute in demon god's fane
(
only you are prepared for the worst
(最悪の事態を覚悟せよ)
they are for you to seal the lid of the coffin made of brick
(
and envoys of the bane that are too painful and too drastic
(汝に
放たれたのは長大な詠唱。既存の伝承ではなく、カインの自作自演だ。それでも速効をみせつけたのは、第一声にもあるように彼の
「
シャロンが〈七つの悪魔〉を、イシュタルが
創造されし金鎖が、うなりをあげて神魔たちを
最も機動力をそがれたのは騎士ベリスと二角獣バイコーンだ。
「
「とっとと消えなァ!」
騎士は
「ぐ、ううッ……!」
二種の
それもそのはず、〈七〉という数字は、七ヶ月、あるいは七年七ヶ月七日冥界にくだり、〈七つ頭〉の武器〝シタ〟の所有者たる彼女にこそ強く作用するのだから。
効果は絶大。
ならばそこを突くのが王道だ。
敵の手数が減ったのをいいことに、シャロンはさらなる恩恵をもとめる。
「我は七つの
あゝ
こしかたゆくすえ 名に
――まったく信じられぬ行動に。
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