3章4話 - バベルの塔
ヒロは聞いていた。バベル、あるいはアベルと呼ばれるのを。
ヒロは見ていた。シャロンたちが
……そう、
バベルの塔。
〈創世記〉で語られる、古代都市バビロンの聖塔〈
その意味は〈神々の門〉。
彼は、……
あらゆる神魔がそれを
「…………ああ、そうか」
それは、もはや自分がなにを行っているのか理解していない。なにを聞いて、なにを見ているのかもわかっていない。ただただ装置であるはずの
「知っていたじゃないか……。僕が存在するだけで、みんなが争うんだ。僕が存在するだけで、みんな苦しみながら死んで
存在するだけで死がうずたかく積みあげられた。装置に人の姿かたちをあたえたパンドラは、そのために
「……だから、だから、僕は――……」
まなじりから涙がこぼれた。
彼女たちは今にも死に絶えようとしていた。今までずっと無数の死を見てきたのだから。見続けるしかなかったのだから。死があまりに
「願ったんだ。誰も死なないでって……どうか犠牲は僕だけであるようにって……」
祈っていた。願っていた。
そしてただ見殺しにするしかできなかった頃とは違い、
変えてしまえばいいのだ。世界を。世界の
だから
「……この
助けをもとめる誰かがいるのに。倒すべき相手がそこにいるのに。
ここで立ち上がらずしてなにが騎士か。ここで貫かねばなんのために
押し潰されそうになる
「……ぁ、ああっ……?」
そこには〝人間〟の姿などひとつも見当たらなかった。
かわりにあるのは醜悪でおぞましい門。シャロンの知る〝
「このときを一体どれほど
バベルとは古代中東における〈界〉と〈界〉を繋ぐ
〈
現状〈バベルの塔〉は、パンドラの死を待たずして自由に異界を行き来するための扉たりえるのだ。それも恐らく唯一無二の。
古代ですら所有者バビロンは、
「さあ、愛しい子。もうなにも心配いりませんわ。ただ
「あ、ああっ……あああ……っ!」
シャロンの
かつて
――Lasciate ogne speranza, voi ch'intrate
(汝等こゝに入るもの 一切の望みを棄てよ)
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