2章6話 - パンドラ候補
シャロンはひっそりと夜闇にまぎれ、彼らが男子寮にむかうのを見送った。
先ほどの態度は
「……行ったわね」
彼らが視認できるかどうかの距離になって、ようやくシャロンは昇降口にもどった。保健室を目指そうと
「キミ、報告内容は確かかね」
相手が
「当然です」
負けじと嫌悪感を隠しもしなかったが、さすがは〈狂いのミルディン〉。気にした
「
「ええ、すべてその通りです」
「ほうほうほう。いいよ。うん、いいよ。キミ、今どこなの。なにしてるの」
なにって、大嫌いなあんたと会話しているのよ。そう言いたいのをぐっとこらえ、彼が求めているであろう
「彼を男子寮まで案内していました。今はローズと合流しに……」
「あああああああ。なにやってんの。ねえ、なにやってんの。馬鹿なの。
「…………は?」
「パンドラなんかどうでもいい。彼の
「なにを……! 確かにパンドラは
さすがに声量を
「……あの、ミルディ……」
「あああ馬鹿。ほんっとうに無能! これだから戦うしか
「なっ……!」
「パンドラなんかより優先に
ふたたびノイズが鳴り響き、
「なによ……どういうことなの……?」
イヤー・カフの位置を直しながら、
ミルディンは神魔研究の第一人者だ。騎士の適性はなく、騎士の座にこそ
では第一人者である彼をして、最重要任務の護衛対象であると言わしめた皆守紘は、一体何者なのか。
報告書をとりまとめたのはシャロンだ。情報の量、質、ともにこちらが
「……ヒロが、パンドラ以上の重要人物である理由……?」
騎士は適性がなければ就任できないため、つねに
「パンドラよりも……パンドラ以上……?」
嫌な感覚が、足下から一気に駆けあがる。
彼の〈希望〉という騎士特性――〝戦意の
初代パンドラが神魔を精神世界に封印したのは、
ミルディンがパンドラより優先すべきと言ったのは、今のパンドラが
「ヒロは……次のパンドラ……?」
呟きは風に吹かれ、なんのかすがいもなく夜に
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