2章3話 - 白痴
まさか、また神魔の襲撃が――……!?
驚いて
一瞬で
「パンドラ!
「ふ、うぅ、うえッ、ああ!」
手首をつかまれたパンドラが恐怖と不快感を
「……ッ! ローズ!」
「はい、ただちに」
ローズは
「あッ、ああ、う、ぁ、あーっ!」
「暴れないで! お願いだから良い子にして!」
「アシュレイ卿、ここはわたくしが。……パンドラ様。
悲鳴はない。抵抗もない。ぷつりと糸がきれたように、パンドラはシャロンの腕のなかに倒れこむ。誰かが紙で指を切っただけで
ヒロが
「あなた、パンドラが今どういう状態なのか理解できているの!?」
幼女をしっかと抱きとめるシャロンだった。神魔との戦いのさなかでも、ここまでの
だが流石は年長にして愛の騎士。ローズ・B・ウェブフィールドは
「
「……っ!」
「また報告書によれば、
ふたりの視線がヒロにむく。思わぬ
流血に身動きできなかった。それにあの
「……っ、……、……ごめんなさい」
シャロンはうなだれ、静かに
「お気になさらず。わたくしはパンドラ様と保健室に行ってまいりますので、アシュレイ卿は紘さまを寮に案内していただけませんか? いつ敵襲があるか予測できぬからこそ、今のうちにできることから片付けておくべきです」
「……でも
「彼は我が身可愛さに逃げる方ではないでしょう。それに消毒前、近親者と別れの
「だからッ、上層部からの命令だって言っているでしょう! それに別行動してビーチェを死なせてしまったら……! 世界の
「……失礼、どうやら
「――〝それ〟は死にました。
死者のために生者をないがしろにするのはおやめなさい」
ローズのまなざしが、ぞっとするほど
体格優位のあるがままに、シャロンの
もしも視線で人が殺せるならば、間違いなく少女は左右対称の肉塊となりはてていただろう。
「……ぁ、」
「なるほど、アシュレイ卿は〈パンドラ〉継承以前の人となりをご
「……死……そ、んな……」
「そうです、死です。死にました。そして死の危険はなにもパンドラ様の
シャロンが助けをもとめるようにヒロへと向き直った。しかし事態に圧倒されるばかりの自分では、かける言葉など見つからなくて。そしてこの状況下、沈黙は少女を苦しめる以外のなにものでもなかった。
「…………パンドラの手当をお願い。私も……彼を寮に送り届けるから」
「ご理解、感謝いたします」
ふたりきりになった部屋で、重く苦しい沈黙が垂れ込める。なにか言葉をかけたいのに、うまく言葉がでてこない。もどかしさの海に
「……、……シャ、ロン」
「…………わかっているわ。ちゃんとあなたを寮まで送り届ける。……ちゃんとお別れできるよう
暴れた
名前を持たない感情だった。まるでヒロが礼拝堂で祈りを
ヒロは今になってようやく靴の裏に風を通した。
「ねえ、シャロン」
「……わかってる。今、案内するからっ……!」
「そのまえに聞かせてくれないかな。どうして君が戦っているのか。どうしてあの子が命を
ヒロの〈希望〉はあの少女との出逢いからはじまった。シャロンを助けたい一心を
君たちの事情を知りたい。
それはきっと騎士として生きる理由に。
戦う
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