うーうー(愛情表現)④

 俺は再びミイラ男に扮装すると、暇潰しにみんなを連れて露店街へ買い出しに出掛けた。


 主な目的はウーの服の調達である。


 タウンハンエイは露店街も落ち着いた雰囲気だったが、それでも人は多かったので、ウーが迷子にならないように俺が負んぶすることにした。


 負んぶといっても人が人の子を負んぶするような格好ではなく、ウーは俺の肋骨に足をかけ、頭頂部に手を乗っけていた。


 高いところから見下ろす景色が気に入ったのか、ウーは終始ご機嫌だった。


 リリカは防水仕様の服を新調した。


 最近は人型モードで居ることが多くなったので、気分転換に別の服が欲しかったそうだ。


「って、気分転換したいのに前と同じ色の服にするのかよ」


「剣星何をいっているの? 前に買ってもらったのが空色で、これは水色でしょ」


「水の色っていうのは空の色を反射しているだろ? だったら、同じ色じゃないか?」


「え? そうなの? 水って最初から水色だと思ってた。また一つ賢くなったかも」


「そういえばリリカは基本的に水色だな」


「あたしは水色じゃなくてスライム色なんだけど!」


 スライム色が何なのかよくわからなかった。


「こっちの服とかどうだ?」


 俺は黄色い服をリリカに勧めてみた。


「あたしが着たら似合うと思う?」


「青系統と黄系統は色の相性がいいんだ、あくまで俺基準だが」


「剣星に気に入ってもらえるならそれで十分よ」


 どこで覚えたのか、リリカは可愛らしい仕草を添えていった。


「ニアーナは食い物以外に欲しい物はないのか?」


 ニアーナは羽衣が標準装備なので、服を買って欲しいとおねだりしてくることはなかった。


「あれが少し気になっているかしら」


 ニアーナが指差したのは、アクセサリーショップだった。


「どれだ?」


 露店街で本物の宝石を扱っている店はないはずなので、そこまで高価な物は並んでいないはずだ。


「この精霊族用の腕輪が気になるかしら」


「それは精霊族用の腕輪じゃなくて、ただの指輪だな」


「し、知っていたかしら!」


「お嬢さんお目が高い。そいつは『所縁ゆかりの指輪』といって、いつでもどこでも、プレゼントを贈ってくれた相手の居場所がわかる優れものさ」


 露店主の初老の男が説明した。


「効果だけ聞くと監視装置みたいだな」


「好きな相手は今どこで何をしているのか、ひょっとしたら別の異性と密会しているのかも、そういった不安を解消できる優れものさ」


「是非、欲しいかしら!」


「ニアーナ、他のやつにしないか? この黄緑の指輪も材質が良さそうだぞ」


「ウーちゃんからも頼むかしら」


「うーうー!」


「ま、あって困る物でもないし、買ってもいいぞ」


 俺は早々に折れた。


 これでニアーナが迷子になる心配がなくなるなら、いいと思った。


 ユメミは持っている服が全てひらひらのついたドレスだったので、タイトな服を何着か買っていた。


 長いスカートは動きにくいということで、結構短めなスカートにしていた。


「結局、みんな服やアクセサリーを買うんだな」


「剣星さんはお洋服を買わないのですか?」


「この体だと、何を着ても似合わないからな」


 まったく肉がないので、どんな服で着飾ってもしわしわになってしまう。


「でも、剣星さんが素敵な心の持ち主だということはわかっています」


「服の話はどこいった!?」


 みんなで露店街を回るのが楽しくて、ついつい遊びすぎてしまった。


 あっという間に時刻は午後五時、そろそろ日没である。


 俺たちはユメミの家に戻り、身支度を調えた。


「ねえ、しばらくお風呂には入れなくなるから、出発前に入らない?」


「賛成かしら!」


「誰かウーと一緒に入ってくれないか?」


 ウーの体は拭いたが、まだしっかりと洗ってはいなかった。


「それは別に構わないのですが、ウーちゃんが剣星さんから離れますか?」


「ウーは何となく俺たちの会話を理解しているっぽいし、大丈夫だろ。な?」


「うー?」

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