世界終焉の日?③
「きっと、誰も傷付けたくない、心優しい方が命じたのです」
「面白い発想だが、心優しい方は人様の迷惑になるようなことをするか?」
「心が優しいとか心が冷たいとか、どうでもいいかしら。無害だとわかったなら、早くそれを報告に戻るかしら」
ニアーナはやや早口でいった。
差し詰め、怖いので、一刻も早くこの場から立ち去りたかったのだろう。
「それだと原因の究明になっていないだろ。大霊園の中に入ろう」
「やっぱりそうなるかしら」
ニアーナは落胆の声を出した。
「不安がることはないわ。だって、剣星が付いているのよ」
そうして、俺たちは大霊園の中へと足を踏み入れた。
大霊園の中は火気厳禁だが、明かりには困らなかった。
大霊園内には発光石がふんだんに使用されており、満点の夜空の中を歩いているようだった。
発光石とは周囲の微弱なマナを集積して、光を放つ鉱石のことである。
「幻想的かしら~」
精霊族がその台詞を口にするのかと、俺は内心で笑ってしまった。
「内部に、スケルトンは居ないみたいね」
「聞きそびれていたんだけど、この大霊園って誰が眠っているんだ?」
「エルフと女神の混血だった、英雄チズリエル様です」
「え、本当かしら!? めちゃくちゃ有名人かしら!」
「どういう英雄だったんだ?」
俺が知らないということは、ここ300年間の英雄ということになる。
「伝説の冒険者様の仲間だった御方です。魔王討伐後には、人類と魔族との共存の道を示し、尽力なさいました」
「へー、本物の偉人じゃないか」
そんな話を挟みつつ、俺たちは大霊園の中心部に辿り着いた。
大霊園の中心部は開けた空間となっており、正面の壁には月明かりを反射した十字架が浮かび上がっていた。
発光石の夜空と相まって、十字架の月が際立っていた。
美的センスの乏しい俺でも、少しゾクッとするような、お洒落な空間だ。
しかし、どうやら俺たちに、感動に浸っている暇はないようだ。
右手の方から、重量感のある足音を響かせながら、巨大なスケルトンが姿を現した。
「我らの警告を無視して、大霊園へ侵入した無法者たちよ。ただで帰れるとは思うなよ」
巨大なスケルトンの右手には、木をそのまま引っこ抜いてきたのかというような、大きな棍棒が握り締められていた。
「って、スケルトンがどうしてここへ侵入できるんだ?」
巨大スケルトンは俺の存在に気付くなりそういった。
「そういうお前もスケルトンじゃないか」
俺は冷静にツッコミを入れた。
「我はオークキングのスケルトンだ。そんじょそこらのスケルトンと同じにしてもらったら困るな」
巨大スケルトンはそう威張った。
「ま、そんなことはどうでもいい。外のスケルトンはお前の仕業か?」
「だったらどうしたというのだ?」
「町の人が怖がっているからやめてくれないか、俺はそれを言いに来ただけだ。お前と争うつもりはない」
「それはできない相談だ。安心しろ、殺しはしない。適度に痛めつけて、この大霊園へ侵入するとどうなるか、お前たちがその身を持って世間に広めるのだ」
「剣星、逃げた方がいいんじゃない?」
「リリカたちは元来た道を戻れ、その間に俺がこいつと話を付ける」
「あわわわ~、ダメかしら」
通路の奥から、カタカタと無数の足音が鳴り響いた。
「逃がしてもらえないようですね」
ユメミは引き攣った表情でいった。
「仕方ない。穏便に済ませたかったが、手加減なしで行かせてもらうぞ。20秒でお前を倒す」
俺はビシッと二本指を立てて宣言した。
「できるもんならやってみな!」
巨大スケルトンは石畳を蹴って跳躍した。
その巨躯をものともしない、軽快な身のこなしである。
落下の勢いを乗せて、棍棒を振り下ろした。
もちろん、狙いは挑発をしていた俺である。
俺は両手を挙げると、棍棒を受け止めた。
「ぬぁにぃ!?」
まさかこんな細身のスケルトンに止められるとは思っていなかったのか、巨大スケルトンは
「多少力に自信があるようだが、このまま押し潰してくれる!」
巨大スケルトンの力のなかなかのもので、俺の足元の石畳に亀裂が入った。
「16、17、18……」
「どうした、約束の20秒だぞ?」
「……20!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます