コバルト色の海に暮らす Vol.2
今日も、時計は要らない。
空の明るさと影の長さだけでだいたいわかる。
この瞬間から「有人島」になったけれど、間違いなく、僕ら以外には「人」が存在しなかった。
いろいろな珊瑚が重なり合う波打ち際は、これでもかと言わんばかりにウニが長い針を突き出していたけれど、僕らへの歓迎と受け取れる心の余裕がうれしい。
パンを手にいっぱい持って、シュノーケリングをする。
すぐに、いろいろな色の魚が手に集まる。こんな色の、こんなにたくさんの魚を間近で見たことはない。
魚たちは、気まぐれな僕らのような訪問者に人馴れしているのか、それとも、人の存在を怖がっていないのか、それとも、意外とホテルと専属契約を結んでいるのか、どちらにしても、僕らの方は、魚に対してこんなにフレンドリーな気持ちを持ったことはそれまでにない。
透明な色に飽きたら、浜に戻ってコバルトとペパーミントの色を楽しむ。二色の成り立ちなんてどうでもいいことと思えるぐらいの美しさ。
この島のこの時間には、目をつぶったあとのまぶたの裏側の色を合わせても、わずか数色しか存在していない。変わりようがないこの数色をなぜにこんなに長い日数楽しめるのか答えは出ていない。
だが、それは、もしかして、
ここに来る前の、数百色の世界を心のどこかで忘れていないことへのアンチテーゼなのかもしれないと思ったりする。
ゆっくり目をつぶる。
やっぱり、まぶたの裏には、数色しか浮かばない。
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