第45話 北信濃への侵入。
捨ててだに この世のほかは なき物を
いづくかつひの すみかなりけむ
(この世にある、我が身の他のものは捨ててしまった。
何処になるのだろうか、私の終の棲家は)
思えば、俺が外交デビューしたのは美濃の
丁度、
春日山城のある
北信濃の
しかも春日山城と善光寺の距離は20里 (80km)でしかない。
強行軍で駆け抜ければ、2日で移動できる。
だから、
北信濃と越後勢は簡単に切れない。
親族は大切だ。
信用を失えば、こつこつと編んで来た繋がりが途切れる。
死ぬよりマシという考え方もあるが、この先も北信濃で生きて行く為に信用を失うのは得とは言えない。
寝返りは得られなかったが、攻められれば降伏も致し方ないと考える領主も多かったのが収穫であった。
「申し訳ございません」
「気にするな。おそらく、そうなるだろうと予測はしていた」
期待されていなかったと勘違いしたかもしれないな、訂正しておこう。
「悔しがる必要はない。
「味方に付けられませんでしたが?」
「寝返らせる事だけが軍略ではあるまい。得難い家臣を得たと思っておる。これからも頼らせて貰うぞ」
「全身全霊を持ってお仕えさせて頂きます」
武田家が何度も襲って来て、両者に両属を余儀なくされていた後ならば、
村上家に対する結束が綻んでいないのも仕方ないのだ。
22日、
敵の撤退が早くなって手柄首が取れなくなって来た。
包囲戦ばかりでは兵も飽きてきてるようだ。
弛むのは良くない。
そこで
1,000丁の火縄銃で威嚇射撃し、正門の上で守る武将らを彦右衛門(
手慣れた連携で
戦いの法螺がなってわずかな時間である。
今川衆、武田衆、諏訪衆、佐久衆、小県衆の武将や兵は何か
門の先に手柄首が待っているのだ。
鉄砲で威嚇して正門も破壊するのは、織田家の攻城戦マニュアルの『その1』に乗っ取った正攻法だ。
織田家の兵ならば、最初に叩き込まれる戦術の1つであり、素早くできて当たり前だ。
できない指揮官に黒鍬衆の称号を与えない。
火薬筒の箱を運ぶ工作兵を守る護衛兵は抱っこ紐(吊り紐)で火薬玉を敵の砦(城)内に投げ入れて
『常識が違う?』
攻城戦とはもっと緻密で高度な駆け引きの先に死力を尽くして戦うとかほざいている武将もいるが、織田家にとって攻城戦は作業の1つだ。
まだ、何か騒いでいるが俺は知らない。
新マニュアルでは「迫撃砲で城を破壊してから攻城戦を始める」も増えた。
それを披露すれば、北信濃の武将や領主らが手の平を返して降伏してくるような気がする。
駄目だ。
それをすると
公方
しかし、
奥州の民は義理堅く、源氏由来の幕府方が多いと思っていたので織田方への誘致は無駄に終わると思っていた。
少なくとも公家様の話を総合すると無理だと思えた。
管領の
信勝兄ぃが信頼できるならば、兵力と火力を与えて北から伊達家や最上家を抑えて貰う手もあったが、下手に大兵力を与えると公方
とてもじゃないが、その手は使えない。
などと思い悩んでいる間に
鐘2つ(二刻、4時間)分だった。
降伏を決めた
室賀氏は屋代氏の支族で北信濃小県郡の国衆だったが、小県郡を追われて
城と言うより、ただの砦だ。
荒砥小城に近づくと威嚇射撃の鉄砲隊が後方から援護射撃を加え、城内の兵は上がってくる兵を止める事もできずに侵入を許し、そのまま乱戦になって陥落する。
以下、同文。
手柄立て放題で満足して戻ってきた。
翌23日、兵の配置を元に戻すべき準備を始める。
堪った
昼の軍議で兵を前進する事を告げた。
「おぉ、遂に決戦ですな」
「
「
・
・
・
軍議の前に
前進して船山郷を吸収する。
西の堂城山と呼ばれる小高い丘の頂上 (461m)にある堂城山砦を取り囲むと、昨日の惨事を知っていたのか敢え無く降伏した。
別部隊が東の
ここで昨日捕えた
北信濃の国衆や領民への心証をよくする為でもある。
翌24日早朝から対岸の塩崎城、赤沢城、小坂城を攻略する準備をしていると、塩崎城の
なんと、大文字一揆衆〔中小国人領主の連合軍である犀川沿岸の栗田氏(長野市栗田)、小田切氏(長野市小田切)、落合氏(長野市安茂里)、小市氏(長野市安茂里)、窪寺氏(長野市安茂里)、香坂氏(長野市信州新町)、春日氏(長野市七二会)ら国人衆〕が味方すると言って来た。
塩崎城の
「
「
「俺はそう思わん。そなたの誠心誠意の真心が通じたのだ」
「そう言って頂けると嬉しく思います」
「屋代衆、及び、大文字一揆衆を
皆、嬉しそうな顔で喜んでいるが俺の内心は違った。
また、予定変更だ。
関東の戦いを放棄して、三国峠を越えて遠路はるばる関東から無理矢理に引き連れて戻って来た兵の士気は下がっていた。
英気を養う為に春日山城で兵を休める必要があった。
宴会で前公方
果たして織田家に勝てるのか?
奥州での小競り合いが終わり、奥州10万の兵が関東にやってくる伝令が走り、関東の兵達にわずかな希望が湧いてきた。
もちろん、
上野国の準備が整ったとの報告を聞いて
22日に春日山城を出発した関東の兵は二本木で兵を休めた。
(屋代から神代まで、7里半 (30km))
24日、こちらは
屋代に隠した兵を援軍に向わせる振りをして『迂回反転』の挟撃を加える。
そこから新吾(
最終的に
もちろん、俺はそれが巧く行くなどと思っていない。
塩崎城、赤沢城、小坂城の援軍に行かずに屋代を攻めてくるか?
攻撃を仕掛けてすぐに撤退するか?
少ない兵をさらに分散して、両岸に兵を散開させるか?
それとも俺が予想しない行動を取るのか?
普通に動けば、塩崎城、赤沢城、小坂城を攻撃した織田方が全滅しても半包囲が完成して、
強引でも俺が
塩崎城、赤沢城、小坂城を含む大文字一揆衆がこちらに寝返るとは思っていなかった。
あぁ~、戦というのは思ったように進まないものだ。
俺は屋代城と塩崎城に防衛ラインを引いて、
結局、
「俺を無視して戦うのか?」
もう
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