閑話。魯坊丸を案じる母。
美濃から帰ってきた
朝を食べると居間で眠り、昼を軽く摂るとまた眠った。
何の事かしら?
おかしな言動は今にはじまったことではない。
産まれたときから変わった子と思っていたが、それでも愛おしいことには変わりない。
父上が熱田明神の生まれ代わりとか言うので、
あの小さな体でそれをすべて受け止めているのが不憫だ。
ふふふ、我が子ながら寝顔は凄く可愛らしい子だ。
二言目には『ぐうたらしたい』と口癖のように言っているが、遊び盛りの時期を大人に混じって過ごしているのだから可哀そうに思える。
「母上、兄上と遊んでよろしいですか?」
「
「ですが、母上」
「
「うぅ~~~判りました」
お兄ちゃんっ子の
眠ってしまった
弟・妹は沢山のおもちゃを考えてくれた
でも、もうしばらく眠らせて上げて欲しい。
千代女の話だと
日が昇る頃に下人の武蔵に抱かれて死んだように戻ってくる。
そして、虚ろな目で朝餉を頂くと死んだように眠る。
当然、登城する時間には熟睡しており、起きる気配も見せない。
しばらくすると、城から使いの者がやってくる。
『本日は体調不良の為、出仕を控えさせて頂きます』
千代女が使者の前ではっきりと申し上げた。
那古野から改めて出仕を促す使いが来ても、そのままふて寝を続ける。
肝の太さは息子ながら呆れてしまう。
殿(信長)を怒らせてもまったく平気なのだろうか。
ホント、(中根)
酷い息子で申し訳ない。
ただ、(中根)
全幅の信頼というのか?
もう、貴方が
日が暮れる頃に起き出すと、大量の手紙をわずかな時間ですべて処理する。
息子ながら、よくもあれだけの量を短時間で処理できるものだ。
私など、一枚の手紙を読むのすら大変だというのに!
付き合わされている千代女や右筆の方々が大変だった。
右筆の方々の働く居間は夜遅くまで明かりが灯っており、夜を通しての作業が続く。
ご苦労さまと食事を取っている右筆の皆さんに声を掛けた。
とてもやりがいがある仕事と言ってくれた。
各国から送られてくる手紙を読むと、尾張に居ながら日の本のことがつぶさに判る。
そして、返書は幕府の御歴代様、宮様、守護の家老や要人への手紙を書くそうだ。
自分の書いた手紙を公方様、もしかすると帝が読むかもしれない。
そう思うと、これほど名誉なことはないと言ってくれた。
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