第6話 桃太郎と仲間達

しばらく歩いていると、桃太郎の前に一匹の犬が現れました。


「ワンワン!桃太郎さん桃太郎さん。そのお腰に付けたきびだんご、一つ私にくださいな。」


桃太郎がどうしようかと迷っていると、今度は別の所から一匹の猿が現れて、桃太郎に言いました。


「ウキウキ!桃太郎さん桃太郎さん。そのお腰に付けたきびだんご、私にも一つくださいな。」


はてさて突然現れた犬と猿の言葉に困った桃太郎の元へ、今度はどこからともなくキジが飛んできました。


「ケーンケーン!桃太郎さん桃太郎さん。そのお腰に付けたきびだんご、私にこそ一つくださいな。」


とうとう困り果てた桃太郎は、とりあえず自分が今から鬼ヶ島に行く事を伝えてみることにしました。


「ワン⁉桃太郎さんは今から鬼ヶ島に行くのですか?」


「ウキ!あそこにはこわーい鬼が住んでいます!」


「ケーン!そんなところに一人で行くのは危ないでございます!」


そんな三匹に桃太郎は大きく胸を張ると、


「僕はこれから鬼ヶ島へ行って鬼退治をするのだ!」


桃太郎の言葉に三匹は驚きを隠せません。

そんな三匹に対して、桃太郎は続けて言います。


「お前たち!僕の鬼退治にお供をするのならば、このキビダンゴをお前たちにやろう!」


三匹は口々に言いました。


「ワンワン!分かりました!あなたにお供しましょう。」


「ウキウキ!承知しました!私も一緒に鬼退治に行きましょう。」


「ケーンケーン!やりますやります!一緒に鬼ヶ島に行きましょう。」


桃太郎は腰に付けた袋からきびだんごを三つ取り出すと、犬、猿、キジのそれぞれの足元にきびだんごを一つずつ置いてあげました。


こうして犬、猿、キジの三匹が、桃太郎の仲間になったのです。


そうして―――


桃太郎一行は、休む事なくずんずん歩いていきます。

愉快な仲間ができた事で、桃太郎一行はとても賑やかになりました。


「ワンワン!桃太郎さん桃太郎さん。だんだんと人通りが多くなってきましたね。」


「ウキウキ!海岸まではまだもう少し先があるようです。」


「ケーンケーン!私らはキビダンゴを貰ったお礼に目一杯働きます。」


そんな三匹に、桃太郎は勇んで応えます。


「よし!海岸へと着いたらまずは船を一つ借りようじゃないか!

その船で鬼ヶ島へと目指すんだ!」


桃太郎一行がエイエイオーと声を上げていると・・・


桃太郎はふと、道行く人たちの様子がおかしい事に気が付きました。


「何だか道行く人たちがすごく不安そうな顔でこっちを見ているぞ。」


桃太郎が周りを見回していると、犬が不満そうに鼻を鳴らします。


「ワンワン!私らは今から鬼退治をしに行こうという勇気ある者達なのに、それをあのような怪訝な顔で見てくるとは全くもって納得行きません!」


「ああ、確かにそうだよな。確かに僕たちは今から鬼退治に…」


犬の言葉に対し、そう桃太郎が言いかけた時、前からすれ違おうとした人の表情がより一層怪訝なものになりました。


通行人のそんな様子を見て・・・

桃太郎は顎に手を当てました。


そして彼は何事かを考えながら、仲間たちに言いました。


「たぶん・・・鬼というのは、もしかすると僕たちの思っている以上に危険な奴らかもしれないな。

だから皆、鬼退治に行こうとしている僕たちをあんな目で見るのかもしれない。」


それを聞いた三匹は「なるほどなるほど」と桃太郎の言葉に頷きます。


しかし、それでも桃太郎の決意は揺るぎません。


「それでも、皆鬼たちによって苦しめられているに違いない!

おじいさんの為に、そして正義の為にも、俺たちは鬼退治をするぞ!」


もう一度彼がエイエイオーと掛け声をあげると、また道行く人たちは桃太郎に注目します。


「ウキウキ!急に大きな声を上げるからみんな驚いてます。」


「はははは・・・悪い悪い。」


猿の放ったそんな言葉に、桃太郎は頭を掻きながら苦笑いしていたのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る