第5話 桃太郎の出発
「それではおじいさん。行ってきます。」
朝、家の前。
鎧、刀を身につけた桃太郎は見違えるほどに立派でした。
おじいさんはそんな桃太郎を感心した様に眺めていましたが、ふと思い出した様に
「桃太郎や、これを持っていくがいい。」
そう言って桃太郎に差し出したのは、一つの小さな布袋―――
彼はその袋の中を見てみると・・・
中にはいくつかの団子が入っていました。
「桃太郎や。これはわしが丹精込めて作ったキビダンゴじゃ。
腹が減っては戦は出来ぬと言うしのう。
鬼が島へ行く前には、必ず食べるのじゃぞ。」
「…おじいさん。何から何まで…本当にありがとうございます。」
桃太郎は目に涙を浮かべ、おじいさんのもとを去ったのでした。
それから―――
旅の道中、桃太郎はおじいさんから貰ったキビダンゴを一つ、袋から取り出しました。
いつも薬草を採っていたおじいさんが作ったからでしょうか、きびだんごは土臭い薬草の匂いが染み付いていました。
そしてキビダンゴをポイッと口に一つ放り込み、頬張ってみると、そのキビダンゴには確かに薬草のような味がしみ込んでいました。
薬草の効果でしょうか―――彼はまるで体中から力が漲ってくるような気持になりました。
それと同時に、その薬草の混じったキビダンゴの味に、桃太郎はいつの日か、おじいさんに優しく抱きしめてもらった日のことを思い出したのでした。
そんな事を考えながら歩いていると、桃太郎はだんだんとワクワクした気持ちになってきました。
鬼ヶ島への道のりはまだ少し遠いですが、桃太郎は勇んで歩んでいくのでした。
「よーし!鬼どもよ、覚悟するんだ。
僕が一つ鬼ヶ島へ行って、鬼退治しようじゃないか!」
桃太郎の旅は、まだ始まったばかりです。
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