第一章 出会い 【秋彦の場合】
途中で、コンビニに寄り、今日の夕飯とペットボトルのお茶を買い、疲れた足取りで、俺は、住んでるアパートへ向かった。
少し錆び付いた鉄の階段の上る。そう、この古びたアパートの2階203号室が俺の部屋だ。
1階の部屋から、カレーの匂いがする。フッ、カレーか。奇遇だな、俺もカレーさ。コンビニのだけどな。
等と、少しカッコよく、心で呟いた俺の背中に、声が響く。
「あれ?あなたも、このアパートに住んでいたんですか!」
この声は。ゆっくりと階段の上から振り返り、下を見た俺は、あの少年の姿に、ドキッとなる。
「一緒のアパートだなんて、知らなかったなぁ。俺、この1階の103号室に住んでいるんです。」
そこまで言うと、少年は軽い足取りで、階段を上ってきた。
えっ?103号室?真下じゃん!俺も、全く知らなかった。
ていうか、ほとんど、近所付き合いとかないし、誰が住んでるかなんて、気にもしていなかった。
「俺、河崎 勇気です。よろしくです。」
そう名乗り、手を差し伸べてきた勇気の手を俺は、軽く握る。
「霧島 秋彦です。よろしく。」
自然と笑顔になる。おい、何、自己紹介してんだ?しかも、笑顔で。
そう、自分で自分に、ツッコミを入れる。
「何だか、嬉しいなぁ。」
優しい笑顔で、そう言った勇気を不思議な気持ちで見ていた。
「今から、夕飯なんです。今日は、カレーなんですよ。俺、カレー大好きなんです。」
そうかい、そうかい。さっきから匂ってる、このカレーの匂いは、君ん家だったんだ。しかも、大好きなんだ~。それは、良かった良かった。
って。知り合いかっ!
再び、ツッコミを入れる。いや、このツッコミは、勇気に対して。そんなことは、どうでもいい!
「それじゃあ。また。」
勇気は、にっこりと笑うと、階段を下りて行った。
何なんだ?何なんだ?何なんだ-!
俺は、慌てて、部屋の鍵を取り出し、自分の部屋を開け、ドアを開けると、中に入った。
「何なんだ………俺。」
何故だか分からないが、ドキドキしている?
勇気の、あの、屈託のない笑顔。
カチャリと、手に持っていた鍵が俺の手から、玄関の床に落ちた。
はぁぁぁぁぁぁあ?!
俺、バカなのか?はぁ?あまりの夏の暑さに、脳みそ、とろけちまったか?
何で、ドキドキしてんだよ?何なんだよ、これ?
ブンブンと、俺は、頭を激しく振った。
「落ち着け、俺。……大丈夫、何でもない。
何でも………ない。」
だけど、あの勇気の笑顔…………
めっちゃ、癒された。
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