第一章 出会い 【秋彦の場合】


………フラレた。


また、フラレた。


これで、何度目だよ、俺。


最初の恋愛は、自分の気持ちに正直に、想いをぶつけてきた。相手の気持ちも大事にしてきたつもりだ。


なのに………。


『秋彦ってさ。……なんか、重いよね。気持ちがさぁ。』


気持ちが重いって、何だよ。


確かに、恋愛は下手だし、俺は、不器用かもしれない。


だけど、俺は俺なりに、大事にしてきたつもりだ。


壊さないように、嫌われないように、大事に大事に。


 次の恋愛は、少し冷静になった。自分の気持ちをぶつけ過ぎても嫌われるなら、そう冷静になるしかない。


何ともないよ。平気だよ。


そんな態度でいたら………。


『秋彦って、冷たいのね。本当に、私のことが好きなの?』






はぁぁぁぁぁぁあ!?


俺は、いったい、どうしたら、いいんだよ。


恋愛が分からない。


人を愛するって、何なんだ?






「ああーっ!面倒くせぇー!!」


外にいることも忘れ、俺は、思わず叫んでしまった。


そう、今、俺は、会社の帰りに、いつも通る橋の上にいる。今の時刻は、夕方の6時30分。


夕日がオレンジに街を染める中、俺は…俺は…俺は、何で、こんな所で、黄昏てるんだ-!!


大丈夫だ。今のは、声に出ていない。少し荒い息を吐き、橋の下を流れる川を見つめる俺の隣から、声が聞こえた。


「ほんと、面倒くせぇーですよね。」


「どわぁーっ!び……びっくりした……いつの間に?」


「えっ?ん~、30分ぐらい前から。」


にっこりと笑い、そう言ったのは、制服姿の一人の少年。見た感じ、高校生か?しかも、俺より、背が高い。いや、そんなことは、どうでもいい。


俺は、少年から目を反らすと、その場を去ろうとした。


「良かったです。」


「えっ?」


眉を寄せ、振り返った俺に、少年は言う。


「何だか、思い詰めた顔をしてたから、飛び込むんじゃないかと思って。」


そう言った少年に、俺は、フッと笑った。


「少し、考え事をしてただけだよ。心配してくれて、嬉しいけど、たかが失恋で飛び込んだりしないよ。」


「失恋……したんだ。」


「あっ…………………。」


チーン。そうだ。そうなんだ。俺は、いつも、そうなんだ。

言わなくてもいい事を自分から言って、自ら、恥をかくんだ。ああぁぁぁ-。今日は、本当に何て日なんだ。


頭を抱えている俺に、少年は、優しく微笑む。


「別れもあれば、出会いもありますよ。それじゃあ。」


そう言うと、少年は、静かに、そこを去って行った。


何だ?何なんだ?!








めっちゃ、俺より、大人だ。


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