君と過ごす夏
大きな河の河原で私はと奏汰と隣り合わせで座っていた。やっぱりこうしているの自然な感じがするし気持ちも落ち着く。
「ねえ」
「ん?」
河はきらきらと太陽光を反射している。
「ホント大変だったんだからね」
「うん」
野面を渡る風の音が心地よい。
「みんなかなすけのこと忘れちゃってるし」
「そうだったんだ」
聞いたことのない涼し気な鳥の鳴き声が聞こえる。
「苦しかった」
「そっか」
傾きかけた陽がきれい。
「まあ奏汰が悪いんじゃないけどね」
「う、うん。でも辛い思いさせちゃったね」
「でも良かった! こうして会えて!」
「ほんとだね。本当に良かった。良かったよ。またこうしてはるはるに会えて」
その時おかしなことに気付いた。
周りにたけやん、るっち、さごがいない。
びっくりしてたら、
「ああ、なんかあっちに買い出しに行くって言うから
もおー、みんながあっちで何かあったらどうするの! 帰れなくなっちゃうでしょ! こういうのって全体行動が大事なの!って言っても「そんな、まあだいじょうぶだよ」って涼しい顔の奏汰。そういうとこだよなあ……ほんと。
なんて言っていたら帰ってきた帰ってきた。すぐそばに
そしたらるっちがにやにやしながら、「はいっ」って私たちに缶を手渡すと三人でどこかに行ってしまった。
見てみるとそれはジンジャーエール。
奏汰は嬉しそうに、
「うわこれ懐かしいなあ」
とか言ってる。
ぷしゅ、と缶を開けてこつんと乾杯する。
「どお? 三年ぶりの味は」
「最高」
すると奏汰、笑顔から真剣な顔になって、
「遥香」
なんて言うもんだから緊張した。
「な、何?」
「ありがとう。遥香が頑張ってくれなかったら僕はこの世界から出られなくて魔物になって殺されていた」
「良かったよ。本当に良かった。そんなことにならなくて」
「全部遥香のおかげだ」
「そんなことないよ。エクスウェラさんとか、他のみんなとか、全員がいないとだめだったんだよ」
「うん。でも…… そうだな、それじゃMVPだな」
「え、車とかもらえるの? もらっちゃうの?」
「乗れないだろ」
「私はね、ほんとのMVPは奏汰だと思うよ。一人でよく頑張ったよね。私なら泣くばっかで全然無理」
「そうかな?」
「そうだよ」
私は奏汰の顔を覗き込んだ。
「やっと終わった」
「ん?」
私は思い切ってそっと奏汰の腕にしがみ付いた。
「やっと終わったよ」
「なにが?」
ふふ、奏汰なんだかどぎまぎしてる? そんなんでちゃんと私に告白できるのかなあ。
どぎまぎしながらも私の言っていることがよくわからない様子の奏汰。
ジンジャーエール片手に私は満面の笑みで答えた。
「君のいない夏」
2021年9月18日:誤記を訂正しました。
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