勝利を掴み平和を得、帰還の前に
僕と遥香の二人でゴズモグ王を倒すなんて思いもよらなかった。
「はるはる、ありがと」
手袋を外して右手を差し出す。
「えっ、えへへへ」
はるはるは実にはるはるらしい照れ顔で手を差し出す。がっちりと握手をした。
「いたいいたいいたい」
「ははっ」
「そうだその腕……」
「うん、治してもらった」
「良かったね」
「うん、良かった」
たけやん、るっち、さごの三人もやってきた。
「らくしょおだったぜえ」
と得意気なるっち
「あっけないくらいだったぜ」
と、こちらも得意げなさご
「と二人は申しておりますが、俺の魔法がなかったら二人共五回は死んでましたぜ」
たけやんが目を光らせて二人を睨む。
「面目ない」
素直に頭を下げるさご。
「ひええ、たけやんが怖いよお」
余り素直っぽく見えないるっち。
たけやんが奏汰に声をかける。
「なあ、これでもうあとは還るだけだろ。還るためのアイテムってちゃんとあるんだよな」
みんな一瞬不安げな顔になる。なんだ地母神エクスウェラから聞いていなかったのか。
「うん。これ」
懐から
「へー」
「これが」
「きれい」
「ルビー?がついてるのか?」
でもすぐに帰るのはなんだかつまらない。そんな気がした。
「どう? これからお祭りになると思うんだけど、それまでここにいない?」
「それまで、ってどれくらいなんだ」
「もうすぐ夏休み終わるしなあ」
「あ~、宿題も全然やってないし」
「るっちは毎年のことじゃん」
「ぶー」
うーん、いまいち乗り気じゃなさそう。
「じゃあ、ここを見学していってよ、僕のいた世界を。僕はここに三年ちょっといたんだ」
「三年?」
「ここと向こうでは時間の進み具合が違うみたいだね」
「へえ」
「じゃあちょっとだけ観光してみようか」
たけやんが了承する。
「あたしもいいよ観光。面白そう」
るっちも了解してくれた。
「なんか腹減って来ちゃったからさあ、食えるもんがあれば……」
さごは条件付き賛同。
「私は勿論」
はるはるは無条件で賛同。
まずは合流してきた僕の仲間たちを紹介した。
るっちは六国王陛下がすっかりお気に召したようで、可愛い可愛いと騒いでいる。陛下はそういうのになれてないのかすっかり動揺していた。かわいそうに。
はるはるは“旧き民”アルノディンに胸を高鳴らせているようで、やたら話しかけている。うんうん、僕の立場は?
もっとも僕は僕で赤龍のチェルに泣きつかれてみんなを驚かせた。特にはるはるがヤバかった。お願いだから静かにして欲しかったよ。
すると“旧き民”アルノディンの配下たちが誰かを担いでつれてきた。“探索者”グラースルだ! 僕は驚き駆け寄った。
焼け焦げだらけの服を着たグラースルは僕を抱き寄せ、僕の知らない言葉で祝福を囁いて、老人とは思えない力で僕を抱き締めた。そして僕たちの前に跪き真剣な顔で古代語で僕たちに謝辞を述べた。それにあわせ、チェル以外の仲間と周り全ての兵士たちが僕たちの前に跪く。僕たちはちょっと得意な気持ちになったけど、それ以上に照れ臭い思いだった。
その後はすっかり晴れた大空を大鷲に乗って飛行した。意外にもたけやんが高所恐怖症だったなんて。でも空をこんな風に飛ぶなんてみんな初めてのことだからキャーキャー言って喜んでくれた。たけやん以外は。
魔族に侵されてなかった数少ない街エディオに降りそこでお土産を買う。みんな色々小さなアクセを買っていた。昼ご飯も食べた。パスタそっくりの麺料理と香辛料の利いたメケ鳥の丸焼き。
夕方も近くなってからこの一帯随一の大河、ローナ河のだだっ広い河原に僕たちは降り立った。
※2021年1月12日 記述漏れがあったので追記しました。
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