再会し、共に闘う

 重重量級のモーニングスターでの度重なるしたたかな打擲ちょうちゃくを受け止め続けた僕は、次第に体力を削られていった。

 ふと意識が遠のきそうな瞬間が来て身体がぐらつくが辛うじて堪える。

 

 距離を保つ。ゴズモグ王の方がリーチがある上に一撃の重さもある。僕は奴に対し攻めあぐねていた。


 背後に気配を感じる。味方は全て僕の前方にあるので、これは新手の敵だ。そこからも距離をとろうと飛びずさった。

 だが、少し様子が違う。ゴズモグ王は僕から目を逸らしその“新手の敵”を威嚇するような呻り声をあげていた。


 僕はこの不思議な何者かに目を向けた。

 屈強な格闘家

 ソードブレイカーと突剣を持った女性軽戦士

 背の高い男性の魔導士

 そして、身長より少し長いくらいの槍を構えた女性戦士

 いずれも手練れの者に見える。


 さっきまであのフォレスのまわりには誰もいなかったはずなのに。


 すると四人の戦士たちは雄叫びを挙げて駆ける。僕を囲み敵から守るように。

 僕の隣に立った槍を構えた女性が声をかけてきた。


奏汰かなた、助けに来たよ」


 その聞き慣れた声にびっくりした僕は周りを見回す。


 格闘家はさご、軽戦士はるっち、魔導士はたけやんだった。

 驚きのあまり声も出ない僕をおいてたけやんが指示する。


「まずは、味方を救うのが先決。それでいいよなかなすけ」


「あ、ああ」


「はるはるは軽い治癒魔法が使えるみたいだから、かなすけを任せた。何とか堪えててくれ」


「う、うんっ!」


 さごが拳で手のひらを打つ。


「さあいくぜ!」


 こちらに来ても落ち着き払ったたけやんの声がする。


「無茶して怪我だけはしないようにな」


 のりのいいるっちはすっかりその気になっている。


「言われなくても分かってるってば!」


 三人は前線に向かって飛ぶようなスピードで駆けて行った。


 遥香はともかく、どうしてみんなまでここへやってきたのか僕には不思議だった。


「でもどうして……」


「さ、話は後あと。これ、何とかしないといけないんでしょ」


 僕が前に立ち、その背後に遥香が立ち回復魔法をかける。体力が、身体の中の活力が注入されていくような感覚を感じる。


 僕は改めてゴズモグ王と対峙した。


 もはや人間ではなくなってしまったが、その眼を見れば何を思っているかよくわかる。怒り、驚き、そしていくばくかの焦り。焔を上げてぎらつく赤い眼にはそんな感情が込められている。


 僕は遥香に声をかけた。


 「僕から離れないで」


 一瞬の沈黙ののち遥香は言った


 「うん、もう絶対離れないから」

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