些かの傷も与えられず、苦闘す

 僕が気が付いた時には、背後からの一撃でうつ伏せの姿勢で地面に叩きつけられた。

 

 身体が言う事を聞かない。

 これは肋骨どころか背骨もやられたかもな。


 剣を抜き仰向けになる。


 ゴズモグ王だ。もしかしてグラースルはこいつとやりあっていたのか。だとすると彼は。

 ゴズモグ王が棘だらけの鉄球を振り下ろしてくる。辛うじて剣で受け止める。だが、これを二度三度、五度六度、と食らうとさすがにきつい。どこかで反撃の隙を見つけないと。


 すると奴の背後に何本もの矢が突き刺さる。エルフのソロンディルが矢を放ったのだ。が奴の岩と溶岩の皮に突き立てられた矢じりはドロドロと熔け落ち矢柄は燃え上がる。

 今度はドワーフが雄叫びを上げ手筒を撃つ。ところがゴズモグ王はこの弾丸を手で受け止め、粉々に握り潰した。

 “旧き民”アルノディンが何か叫びながら両手剣を思いきり振り下ろすが鈍い音がするだけで何のダメージも与えられなかったようだ。


 赤龍チェルが僕を抱え起こす。僕は身体のあちこちの具合を確かめた。幸い骨折とかはしてなさそうだ。だがひどいダメージを受けたせいか身体中が痺れるような痛みに襲われていて足腰が立たない。

 アルノディンはゴズモグ王の鉄球を辛うじて大剣で受けたものの吹き飛ばされた。ソロンディルとザスカの射撃もことごとく跳ね返されている。


 ゴズモグ王がこちらに向き直る。チェルが赤龍に変化しようとするが僕はそれを制止し、よろよろと両手に剣を構える。


 するとアフェラス六国王陛下が我々の間に割って入ってきた。盾を構え古代神聖語で何か唱えると、盾から発せられた強烈な閃光がゴズモグ王に浴びせられる。その隙に僕は力の限り奴に突進して肉薄し一撃を喰らわせたが、力が入らず深手を与えるには至らない。再び陛下が僕の前に立ち、僕をかばうように盾を構えて防御の構えをとる。

 だが鉄壁の護りを誇る陛下とその盾をもってしてもゴズモグ王の攻撃を受けきれるものではない。僕は痛みを堪え呼吸を整えながら、聖剣オルティアと神剣アルクレストを構える。意識を両肩と両腕に集中した。


 僕は渾身の連斬撃を繰り出すがゴズモグ王はそれを全部モーニングスターで受け止め結局ほとんどダメージを与えられなかった。


 すると、ゴズモグ王が雄叫びを上げる。その声に呼応してオーク兵が彼のもとへ集まろうとし始めた。我々の手勢は五十程度しかいない。仲間たちはゴズモグ王にほとんど傷を与えられないこともあり、僕はオーク兵への対処を頼んだ。


 さあ、いよいよ最後の一騎打ちだ。こいつを倒せば僕の役割は終わる。勝つ。必ず勝つ!

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