水盤を通し交友を温め、隙を衝かれる
暖かい朝日が奏汰に当たって、遠目にもその全身がはっきりと見えるようになる。
奏汰はこちらを気にはしていたようだけど、他の色々な人が集まってきて何か話し始めた。エルフ、ドワーフ、うわ、ホビットまでいるよ。美少年にイケメンのおじさまにちょっと変わった赤い服を着た赤毛の女の子。
深刻そうな表情で何か話すと二人一組で散った。何か、とか誰かを探してるのかな。
物か人探しは成果がないみたい。するといかにもおじさまの仲間らしいイケメンがいいっぱい! きゃー! って思ったけどお風呂入ってなさそうだな。
すると探し物をみんなに任せたのか、はたまた単にサボっているのか、奏汰が私たちの方に近づいてくる。
あ、私イケメンだからってキャーって言ってちゃいけないんだった。ごめん奏汰。
朝日に照らされた奏汰の姿は、三人にもはっきり見えるようになった。
「あ、奏汰だ」
「うんうん! 奏汰だ。おーい」
「あいつ本当に異世界に行っちまったのか」
うんうん、私の時みたいに、直接会ったらスパッと思い出せたみたいね。よかったよかった。
「こっちに戻って来れるのか?」
「怪我とかしてない?」
「ちゃんと三食食ってるか?」
三人がてんで勝手にまくし立てるんで苦笑いをする奏汰。分かりやすく口を動かして「必ず還る」って言ってくれた。
よかったね、よかったねぇ、ってるっちが私の肩を掴んでくれたから、つい私も半べそでうん、うん、って頷くしかなかった。
四人で意思疎通のほとんどできない身振り手振りを交えての会話で笑いながら話していると、なんだかいつもと同じような、だけどなんだかすっごく懐かしいような、そんな気がしてまた少し涙が出て来た。
これで後期授業はまた一緒にいられるねっ! そうだ、ジンジャーエール、まだ飲みかけのがあるけど、さすがに間接……になるからやめとこ。恥ずかし。
なんて和気あいあいしていると、奏汰の背後でいきなり土煙をあげて何かが地面から飛び出してきた赤黒く真っ赤な目のようなものを光らせた何か手には鎖で繋がった鉄球のついたこん棒みたいのを持ってる。
私たちは驚きと恐怖で絶叫した。
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