探索者の行方知れず懸命に探し求める。捜索――

 僕たちがフォレスに辿り着いた頃、オークの百人隊長ゾアルゴが配下を引き連れ“六国王陛下”と“旧き民”アルノディンに襲い掛かっていた。一般の兵にとっては札付きの凶悪な敵だ。

 二人にとってはゾアルゴ一党など敵ではないと思うが、衆寡敵せずという言葉もある。応援に向かおうとした。

 これに空からエルフのソロンディルとドワーフのザスカのペアが援軍に加わる。これならもう安心だろう。

 僕はゾアルゴを引き受け、最後は幾分の余裕すら持って屠った。


 フォレスに向かおうとしたが、小さき人二人も現れたので、ここで一息つきながら全員の点呼を取った。


 アフェラス六国王陛下

 旧き民、アルノディン

 小さき人の、エルとエナ

 エルフのソロンディル

 ドワーフのザスカ

 亜龍、いや赤龍チェル

 そして僕。


 “探索者”グラースルがいない。

 彼がそうそう敵に後れを取るとは思えないが、万が一のこともある。そしてその万が一の場合、敵は手練れや強者といった言葉で済むような相手ではないだろう。

 僕たちは数人ずつに分かれて手分けして彼を探すことにした。


 岩のごろごろ転がる荒涼とした荒れ地を僕たちは隈なく探し回ったが、手掛かりらしきものは見当たらない。僕たちの間に焦りが広がる。グラースルは僕たちを引き合わせ当代一の戦闘集団に仕立て上げてくれた立役者だ。それに右も左も分からない僕をここまで導いてくれた、ベルエルシヴァールにおける父のような存在でもある。絶対に倒れて欲しくない。そんなことはあってはならない。絶対に。


 すると、十数名の“旧き民”たちが現れ捜索に加わってくれた。


 ここで僕はようやくフォレスの向こうのみんなのことを思い出し、そちらへ向かう。僕が姿を現すと、はるはるは泣きださんばかりだ。後ろのたけやん、るっち、さごの三人は驚いていたり不思議そうな顔したり何かまくし立てていたりとやかましそうだ。声が聞こえないのが残念だなあ。

 僕は四人の前で大きく口を動かして、「もう少しで還る。今忙しいけど必ず還る」と伝えた。四人も口々に何かを言っているようだが、早口でよくわからない。


 でも、こうしているとなんだか向こうの世界にいた時と同じでほっとする。そしてもうすぐ僕はそっちに還れるんだ。そしたらまたみんなで遊びに行こう。一緒に学校に行くことはできないだろうけど、会って一緒に他愛のないおしゃべりで笑いあおう。そんなささやかな日常がどれほど大切なものなのか僕は知りもしなかった。

 僕はそんなことを考えながらかつていた世界での日常を懐かしんでいた。


 その時フォレスの向こうの四人が一斉に叫んだような、そんな気がした。

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