命を賭せば救いあり、女神――
でもどうすればいい?
僕の命数を削るしかない。もしかすると大した効果もないどころか、ここで命数を使い切って死んでしまうかも知れないけれど、何もしないよりははるかにましだ。
僕は心の臓と丹田に意識を込め、左手の神剣アルクレストをあらん限りの力でゆっくりと天に掲げる。
もう息も限界だ。このままでは火山性の亜硫酸ガスを吸って僕はほぼ即死する。
天に剣を掲げ心の中で念ずる。
「宿命の星アスター、運命の風ヘラティア、聖なるかな今は亡きエクスウェラ、我が命をもって理を崩さん!」
呼吸が自由になる。大きく息をすると神剣を通し身体中に力が
二度目には
そのとき目には見えていないはずの神剣アルクレストが輝くのを感じた。これには驚いたが、それ以上に驚いたのは、確かに頭上から光が射しているのが分かったことだ。気が付くと僕自身の身体も輝いていた。
驚いて天を見上げる。天から人が、女の人が…… いやあれは人間じゃない。人の姿をした何か。神龍とも違う……
あれが、あれが神というものなのか……
その女神はまるで天から降り立ってきたようだった。歴史の教科書かなんかで見た古代のトーガのようなものを身にまとい頭を下にして手を伸ばしゆっくりと降り立ってきてる。
身体がどんどん軽くなる。溶岩もまるで薄く引き伸ばしたいちごジャムのようになっていた。僕は一回転して両手の剣で一凪ぎすると僕の周囲から溶岩は一掃された。
僕と女神がただここにいるだけでガルバゼスはその力をそがれていくようだった。汚い音を立てながら溶岩が崩れ落ちただの岩へと変わっていく。
ガルバゼスがその身体を崩壊させながらも岩と溶岩でできた幾本もの触手を僕と女神に放ってくる。
僕はそれを聖剣と神剣で切り裂き、叩き落とし、奴の中心部へあらん限りの魔弾を放った。女神にも触手が伸ばされるがこれは女神に触れる前に勝手に熔け落ち崩壊していく。
僕は中心部へと難なく辿り着いた。
そこにあったのは……
「ゲコ」
……ヒキガエル?
「ゲロゲロ」
……これが、魔王と呼ばれたガルバゼスの正体だったというのか?
「ゲロッ、グェッ、グプッ」
ヒキガエルは何かを吐き出した。
それは僕が持っているのと同じ
すっと背後から人が近づいてくる。
いや、人じゃない。女神だ。僕は茫然として女神を見つめる。
「よくやりましたね。
「僕のフルネームを?」
「ええ、あなたのいた世界で知りました。あなたの名前も、そしてあなたの身をずっと案じている
そして女神は慈母のごとき微笑みを浮かべた。
「あなたや遥香さんの世界へ閉じ込められていた私は、遥香さんのおかげでこうしてベルエルシヴァールへ帰還することが出来ました。
我が名はエクスウェラ、大地と豊穣と、調和と愛の神です」
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