謀(はかりごと)に手を染めたれば、後悔の念治まる事を知らず――

 焔滅妃アステアナを倒した我々は次なる目標ゴズモグ王と魔王撃退のための策を練る。

 数こそは少ないとは言え、敵の軍勢はまだ何十万といる。

 それでもゴズモグ王はドワーフから奪い取った大洞窟都市、オガリオンから出ることはままならない上、魔王もアステアナのような軍勢を統率する力を持ってはいない。遥かに御しやすい敵と言える。

 そのため僕らは今までよりずっと容易に軍の再編を行う事が出来た。アフェラス六国王陛下は全大陸に蜂起の大号令を発し、少しずつではあるが軍の再編も進みつつある。

 戦いに消極的だったエルフもアルクアノーレ王の説得により、これまで以上の兵を出してくれそうだ。

 ドワーフはオーゴ山嶺の一族が死を賭してアレンダの会戦で勝利したことに深い感銘を受け、闇の軍勢との戦いに消極的だった多数の氏族が参加。中には族長自ら出陣する氏族まで現れた。


 小さき人も様々な庄からわずかばかりながらも出兵をする。


 亜龍については、考え方があまりにも我々とは違うので、何も期待しない方がいいだろう。


 大鷲は族長のサレスディア以下これまでと同じ数が参加する。エルフを乗せて翼竜や地上を弓で狙う事も可能だろう。


 敵軍の状態はまだよくわからないが、少なくとも我々の状況は右肩上がりに向上している。



 一方の僕は。


 今更ながら碧月涙エディルナを向こうに置いてきたことを深く後悔していた。

 僕にはそんなことをする権利なんてあったのだろうか。


 もし、全く無関係の人がこれを手にして、この世界へ来てしまったらどうしようか。

 そうでなくとも、遥香がこれを手にしてこの世界へ来たのなら。


 自分からことを起こしておきながら今はただ、彼女がここへたどり着かないことを切に願っていた。


 天幕の椅子にかけ僕はずっとそんな事ばかりうじうじと考えていた。


◆次回

 真実に慄(おのの)き、媼(おうな)の正体推当す――

 2020年11月6日 21:30 公開予定

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