決戦近し、戦備え――

 僕たちは文字通り東奔西走し散り散りになった残存兵力をかき集めようとした。


 ただ焔滅妃アステアナは人間の居住地を手当たり次第に焼き討ちし始めたので彼らの避難が先決だった。エルフの隠れ里、ドワーフの隠し砦、小さき人の丸穴住まい、亜龍の空中都市、どこでもいいので受け入れ先を探したがどこもいい顔をしない。それでも我々の交渉やアフェラス六国王陛下のご尽力でどうにかこうにか人々は逃げおおせることに成功しそうだ。


 それとあわせて四人のエルフ王の一人アルクアノーレ王の深緑の森へ立ち寄った際、僕の腕の治療を依頼した。「ガランの骨」を見せると王は大いに驚いたが、直ちに僕の腕の再生に取り掛かってくれて、わずか二日でそれは完了した。


 ベッドから起き上がり自分の新しい右腕を見る。少し色が白いが間違いなく自分の腕だ。肘を曲げて手を開いたり閉じたりすると、思った通りに動く。肩には何だか筋のようなものがあってここから新しい腕が生えたのが判る。なんだか少し筋肉質になって力もずっと出そうな感じだ。前の腕でもリンゴを握り潰すなんて余裕でできたけれど、今度の右手ならヤシの実だって片手で割れそうだ。これならさらに大きな戦果をあげられるかも。


 僕が右腕の再生術を受けている間、小さき人の軍師エルとエナを中心に作戦が練られていた。

 その作戦は“探索者”グラースルや旧き民のアルノディンといった軍事に知悉ちしつのある人たちも満足させたようだ。


 さあ、僕の腕もすっかり再生し、策も得た。いよいよここ一番大勝負、天王山だ。



◆次回予告

 ともがら大いに疑う、花火の夜――

 2020年10月31日 21:30 公開予定

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